最近、コーダの次男が、犬や魚などの手話を外の場でもさらりと披露してくれることが増えました。
保育園でも、連絡帳に「てんてい(先生)」や「ママ」など、声に出してくれましたと書かれていることがあり、ほっこりしています。
今回も、コーダを育てる難聴・ろう者の親として感じた悩みや戸惑い、そして実際に経験したエピソードをお話ししました。
これまでインタビューした方はこちらから読めます!
1人目

2人目

そして、今回の3人目は、鈴木夫婦です!
聞こえる子どもの子育てに悩む聞こえないパパ・ママや、聞こえる子どもたちが交流できる場づくり「福岡県こだおや会」の代表・スタッフとして活動されています。

今回のインタビューでは、聞こえない親が聞こえる子どもを育てる中で感じることや、家族での手話・音声を使ったコミュニケーションについて、たっぷりお話を伺いました。
3人姉妹を育てる、難聴の玲雄さんとろう者の和恵さん
――お子さんの年齢・人数を教えてください
玲雄11、8、4歳3人姉妹がいます。

聞こえるか、聞こえないか。その先に、無事に生まれてくること
――聞こえる子(コーダ)と分かったとき、どんな気持ちでしたか?
その後、気持ちの変化はありましたか?
玲雄特にありません。ただ、自分の両親は、障害を持つ子どもが生まれてくるかもしれないことは口にしていましたが、特に気にはしていませんでした。きこえたらどのように育てようか、きこえなかったらどのように育てようか、という話をするくらいで、気にしていなかったです。
――私も同じです。聞こえるか、聞こえないか、どちらであっても大丈夫なように、心の準備はしていました。
和恵なんとなくの勘ですが、私たち夫婦の子どもは聞こえる子だろうなと、どこかで思っていたので、特にびっくりしたわけでもありませんでした。無事に生まれてくることが一番でした。
――どちらの可能性もなんとなく想像していたから、実際に聴こえないと分かっても、そこまで驚かなかったのですね。
家族のきずなを深めるために必要なのは「手話」と「聞こえないことへの理解」
――子どもとのコミュニケーションで工夫していることは?
具体的なエピソードがあれば教えてください
玲雄自分の中で、家族の絆を深めるために必要なのは、『手話』と『聞こえないことへの理解』でした。
僕は、年をとっても家族ときちんとコミュニケーションをしたいという思いがあります。そのため、『コーダの同年代とろう児との交流』の場をつくっています。
こうした交流を通して、違っていてもいいんだという心を養っているように思います。
――「コーダの同年代とろう児との交流」の場は、本当に大事だと思います!普段とは少し違う環境の中で、自分と違うことに抵抗や違和感を感じることもあると思います。そんな気持ちにも寄り添いながら、サポートしていきたいですね。
和恵産まれる前から夫婦で『手話が必要だから、絶対に手話で話しかけよう』と決めていました。でも、一人目が産まれると、初めての育児で戸惑うこともあり、音声と一緒に話しかけることが多かったです。
それでも、毎日手話で語りかけることで、少しずつ覚えてくれました。4歳の頃が一番お話上手で、たくさん伝えたいことがあったはずなのに、手話がまだまだで、こちらもうまく読み取れず、娘をイライラさせてしまうことが何度かありました。
少しずつ意思疎通ができるようになったのは、この頃に指文字をようやく覚えたことがきっかけだったと思います。分からない手話は指文字を使うことで、イライラが減ってきたように思います。
2人目以降は、声なしで手話で語りかけることを増やしたので、覚えるのも早かったと思います。今では、すっかりみんな手話で毎日いろいろな会話をしているので、楽しいです。
子どもたちも、喉が痛くて声が出ないときなどに、子ども同士で手話で話しているのを見ると、なんだか嬉しく思います。
――声が出ないときにも、手話があるととても便利ですね!お子さんたち自身が手話の良さを感じているのも素敵です。そうした環境の中で、手話が当たり前にある土台がつくられていくことが大切ですね。
発声を減らし、手話で話す。目を合わせることも大切に
――子どもに対して気をつけていることは?(実際の場面などあれば)
玲雄3番目の娘は、声を出して話しかけることが多かったせいか、『聞こえない、声を出して』と言うようになりました。それからは、できるだけ発声を少なくして、手話で話すようにしています。
――つい声を出して話していたら、まさかの「聞こえない、声を出して」という言葉に、ドキッとしたのですね。
和恵目と目を合わせて話すことをよく伝えています。
――聞こえる子は、つい耳で聞くことに慣れていて、相手の目を見ないことも多いですよね。だからこそ、目と目を合わせて話すことが大切なのですね。
幼児期は、手話がまだできなくて当然の時期
――コーダを育てる中で大変だと感じることは?また、それをどう乗り越えていますか?
玲雄聞こえない人がいるなかで聞こえる人同士で話すときは、どうしても『口話』になりがちです。気にしなければいい話なのかもしれませんが、それではいつまでたっても、聞こえない人と聞こえる人との間に壁ができてしまうと思います。
――気にしなければいいのかもしれませんが、それが壁になってしまうからこそ、子どもたちにできるだけいろいろ伝えているのですね。
和恵幼児の時期は、手話がまだできなくて当然の時期です。話したいことがあるのにパパやママに伝わらない、こちらも理解してあげられない。この時期が一番大変というか、申し訳ない気持ちがたくさんあります。
3人目は、姉2人が通訳してくれることがあるので、助かることがよくあります。
それでも、自分で伝えてほしいので、急ぎのことなどでなければ、通訳を介さずに理解できるように努めています。理解できたときに、『手話はこうやるんだよ』と、そのときに手話を見せるようにしています。そうすると、次から覚えた手話をすぐに使ってくれたりします。
そうやって、乗り越えていると思います。
――手話をまだ覚えていないときは、その場で『こうだよ』とさらりと教えてあげる。そうすることで、通訳を介さず、親子が1対1で向き合ってコミュニケーションをとれることが大事なのですね。
マスクを外して話してくれる、手話で挨拶してくれる。その気持ちが嬉しい
――学校や保育園で印象に残っている出来事を教えてください (嬉しかったこと・困ったことどちらでも)
玲雄「僕は妻よりも学校や保育園に行くことが少なく、保護者との交流も浅いのですが、保育参観や授業参観で行くたびに、ママ友が話しかけてくれるときにマスクを外して話してくれたり、手話を覚えようとしてくれたりすることがうれしかったです。
――子育てで忙しいなか、手話を覚えようとしてくれると、嬉しいですね!
和恵保育園のお友達が何人か話しかけてくれるのですが、何を言っているのか分からないことが多く、どう反応していいのか、いまだに悩みます(笑)。でも、そのときに娘たちが通訳してくれることもあります。
学校のお友達が家に遊びに来たときに、自ら考えて筆談でコミュニケーションをとってくれる子や、恥ずかしいけれど勇気を出して、『ありがとう』『こんにちは』などを手話で挨拶してくれる子がいると、とてもかわいくて嬉しいです!
――私も次男の保育園に迎えに行ったとき、お姉さんが手話で挨拶してくれて、びっくりしました。とてもかわいくて、嬉しくて、心が温まりますね!
会話についていけないときは、無理に入らない
――「聞こえる世界」と関わる中で、難しさを感じる瞬間はどんなときですか?
玲雄時々きこえて、時々聞こえない世界にいる自分は、声も合わせて手話をしてしまうので、子どもと過ごすときは、うっかり声中心にならないようにすることです。
――わかります!私たち夫婦は、声なし手話でいこうと意識していますが、私はそこまで発音が得意ではないのに、声も合わせてつい言ってしまいます……。
和恵職場でも、数人のママ同士の話でもよくあることですが、会話に入れない、ついていけないことが一番難しいです。
『なんの話?』と聞けるときもあれば、聞けないときも多々あります。様子や空気、タイミングを読みながらなので……。『今日は無理だ』と思ったときは、なるべく会話に入らないようにすることもあります。
――「無理だ」と思ったときは、無理に会話に入らなくてもいいのですね。
そのほうが自分の心も守れますし、相手にも気を使わせずに済むのかなと思いますね。
歩み寄ろうとしてくれる姿に感動した
――コーダを育てて、子供から嬉しかったこと、感動したことなどエピソードを教えてください
玲雄『パパやママのようにきこえなくなりたい』と言って、僕の補聴器を耳につける様子を見て、歩み寄ってくれているんだなと、その姿に感動してしまいました。
――これは嬉しいですね。夫婦がこれまで意識してやってきたことの結果だと思います。
和恵相手の言っていることが分からず、聞き返したり、音声アプリを出そうとしたりしたときに、すっと通訳してくれることです。
『耳が聞こえないから、ゆっくりお話してね』と、前もって友達に伝えてくれたこともありました。
――困っているときに自然と通訳してくれるのは、普段からご夫婦の様子をよく見ているからこそですね。
手話とバランスよく利用しながら楽しくコミュニケーションをとるのもあり
――同じようにコーダを育てている親へメッセージをいただけませんか?
玲雄子育ては試行錯誤です。僕も子育てで失敗することがありますが、妻からアドバイスをもらいながら、子どもたちと向き合っています。
和恵特に、コミュニケーション方法について悩むのは当然だと思います。娘たちの伝えたいことを理解してあげられないもどかしさを、何度も経験しました。
今は、音声アプリや字幕メガネなど、開発も進んできています。手話とバランスよく利用しながら、楽しくコミュニケーションをとるのもありだと思います。
一人で悩まず、誰かに相談したり、話を聞いてもらったりしながら、それぞれの親子で乗り越えられたらいいなと思います。
一緒に楽しく頑張りましょう!
長女と次女には、パパやママ以外にも、さまざまなきこえない人がいることを知ってほしいという想いから、
福岡ろう劇団博多の団員として一緒に演劇活動をしています。
福岡ろう劇団博多
HP :https://sites.google.com/view/gekidanhakata/?pli=1&authuser=0
Instagram: https://www.instagram.com/fukuokadeaftheaterhakata/



――楽しそうなお子さんたち!聞こえ方が違う人と交流はとても大切ですね!
――ありがとうございました!
「伝えたいことを理解してあげたい」という気持ちは、どの親も同じなのだなと感じました。
子育てには答えがないからこそ、それぞれのお子さんに合わせて考え、向き合いながらコミュニケーションをとっていくことが大切なのだと、今回のお話からよく伝わってきました。
そして、悩んだときは一人で抱え込まないこと。
誰かに相談したり、話を聞いてもらったりすることも、育児の大切な支えになるのだと思います。
鈴木和恵(すずきかずえ)/福岡生まれ
生まれつきの両感音性難聴と思われる。地域の保育園・小学校に通い、中学から高校まで聾学校で学ぶ。
3児の母。2024年、友人と「福岡県こだおや会」を設立。現在は代表として、ゆるーく活動中。
鈴木玲雄(すずき れお)/滋賀県大津市生まれ
福岡市在住。2歳半ごろに混合性難聴となる。高校時代、演劇部の文化祭公演に惹かれたことをきっかけに俳優活動を始め、同時期に手話を学び始める。2004年、九州を拠点に活動する手話劇団「福岡ろう劇団博多」に入団。2014年から代表を務め、手話や音声、身体表現を生かした舞台づくりに取り組んでいる。
3児の父。長女、次女も劇団活動に参加している。2024年からは妻とともに、聞こえる子どもの子育てに悩むき聞こえないパパ・ママや、聞こえる子どもたちが交流できる場「福岡県こだおや会」のスタッフとして活動している。
Instagram:codafukuoka

