触覚で社会とつながる——盲ろう者として、これから仕事で届けたいこと

左側に「触覚で社会とつながる 盲ろう者として、これから仕事で届けたいこと」のタイトル。右側に、考え事をしている人のイラストが描かれている。

皆さん、こんばんは!

前回の記事はこちらです。仕事を通して社会とつながり、自分の考えや表現をより具体的な形で届けていく──

その中で、盲ろう者としてどのように働いていくのか、課題やできることについて紹介しています。ぜひあわせてご覧ください✨

目次

はじめに——触覚を、社会にひらくために

私は2026年3月に大学院を修了し、これから自分の研究や経験を、社会の中で,、仕事につなげていきたいと考えています。大学院では、「触覚のアフォーダンスを手がかりとしたサインシステム」をテーマに研究を行いました。視覚や聴覚だけに頼らず、触れることで情報を得られる仕組みとして、「触覚サインボタン」や「握手の手すり」などを制作しました。

私は、生まれた時から目と耳の両方に障害がある先天性盲ろう者です。日常生活の中で、触覚や身体の感覚を手がかりにして、周囲の状況を知り、人と関わり、社会とつながってきました。だからこそ、私にとって触覚は、単なる「補助」ではありません。触覚は、情報を得るための手段であり、人とつながるための感覚であり、社会をより使いやすくするための大切なデザインの視点です。

この記事では、私がなぜ触覚デザインに取り組んでいるのか、これまでどのような活動をしてきたのか、そしてこれから仕事として何を届けていきたいのかを書きたいと思います。

見る・聞くことだけに頼らない社会へ

社会の中には、まだ「見えること」「聞こえること」を前提に作られているものが多くあります。案内表示、音声案内、ピクトグラム、ボタン、サインなどは、多くの人にとって便利なものです。しかし、見えにくい人、聞こえにくい人、点字を読めない人、日本語が分からない人、高齢者、子どもなど、利用する人の状況はさまざまです。私は、今あるデザインを否定したいわけではありません。むしろ、視覚や聴覚を中心としたデザインに、触覚という視点を加えることで、もっと多くの人が安心して使える環境をつくれるのではないかと考えています。

触れることで、意味が分かるデザイン

私が大学院で取り組んだ制作の一つに、「触覚サインボタン」があります。たとえば、多目的トイレでは、水を流すボタンと非常呼び出しボタンが近くにあり、形も似ていることがあります。私はこれまで、触って確認しようとして、間違えて非常ボタンを押してしまった経験がありました。音が聞こえないため、自分が誤操作したことにすぐ気づけないこともあります。この経験から、私は「触った時に、意味や役割が直感的に分かるデザイン」が必要だと考えるようになりました。

触覚サインボタンでは、形、凹凸、素材、位置などを手がかりにして、ボタンの意味を分かりやすく伝えることを目指しました。

触覚は、見えない人や聞こえない人だけのものではありません。暗い場所で見えにくい時、言葉が分からない時、急いでいる時、子どもや高齢者が使う時など、触って分かる情報は多くの人にとって安心につながります。私は、触覚を「特別な配慮」ではなく、誰にとっても使いやすい環境をつくるためのデザインとして考えています。

人と人をつなぐ触覚——握手の手すり

もう一つの制作に、「握手の手すり」があります。これは、手すりを単に身体を支えるものとして考えるのではなく、人と人とのつながりや安心感を感じられるものとして考えた作品です。

私は、ロンドン、オランダ、ノルウェーへ渡航した時、握手やハグなど、触れ合う挨拶の文化に出会いました。盲ろう者である私にとって、相手の表情や声だけで相手を知ることは難しいです。しかし、握手をすると、手の温度、力の入り方、触れ方から、その人の存在を感じることができます。

握手は、ただの挨拶ではありません。相手を感じ、信頼関係を築く入り口でもあります。その経験から、私は「触れることで、人とのつながりを感じられる手すり」を考えました。

触覚は、情報を伝えるだけではありません。人の気持ちを動かし、人と空間、人と人との関係をつくる力も持っていると思います。

盲ろう者としての経験から生まれる視点

私は日常生活の中で、足裏に伝わる地面の感覚、白杖から伝わる凹凸、空気の流れ、振動、温度、素材の違いなどから、周囲の環境を感じ取ってきました。私にとって触覚は、世界を知るための大切な入り口です。この身体感覚に基づいた視点は、机の上だけでは生まれにくいものだと思います。

実際に触れ、移動し、迷い、困り、試しながら得てきた感覚だからこそ、公共空間やプロダクトのデザインに新しい視点を提案できると考えています。

これまでの実績・活動——研究・展示・ワークショップ・執筆

私はこれまで、触覚をテーマにしたワークショップ、展示、リサーチ、執筆などに取り組んできました。大学院での研究制作として、「触覚のオブジェクト・アトラス」「触覚サインボタン」「握手の手すり」などを制作し、展示も行ってきました。

また、Tokyo Art Research Labでのワークショップ講師、ACY アーツコミッション・ヨコハマ助成によるワークショップ主催、【ソメルポ】さわる染めワークショップ、BumB WEEKENDでの触覚ワークショップなど、さまざまな場で触覚の可能性を伝えてきました。

執筆活動としては、Webサイトメディアである“キコニワ”や“こここ”で、触覚、盲ろう、アクセシビリティ、社会との関わりについて発信してきました。

ほかにも、武蔵野大学SDGs、Spotlite、朝日新聞などに紹介していただきました。

MAGNETでの活動と海外での学び

デザインコレクティブMAGNETとしても、作品制作、展示、ワークショップ、海外リサーチに関わってきました。

国内だけでなく、ロンドン、オランダ、ノルウェーなどでの活動を通して、触覚が国や言語を越えて人と人をつなぐ感覚であることを実感してきました。これらの経験を通して、触覚は盲ろう者や視覚障害者だけのものではないと感じています。障害の有無、年齢、国籍、言語に関わらず、多くの人に新しい気づきや楽しさを届けられる感覚です。

これから仕事として取り組みたいこと

これから私は、触覚デザイナー/アーティスト/研究者として、触覚の視点を社会の中に広げていきたいと考えています。特に、駅、空港、商業施設、福祉施設、学校、病院、展示施設など、多くの人が利用する場所で、触覚を活用したサインや空間づくりに関わっていきたいです。

今後は、企業、団体、自治体、教育機関、文化施設の皆さまと一緒に、次のような仕事に取り組みたいと考えています。

  • ユニバーサルデザインに関する相談・コンサルティング
  • 公共空間や施設のアクセシビリティに関するリサーチ
  • 触覚を活用したプロダクトや空間デザインの提案
  • 当事者の視点を活かしたワークショップの企画・実施
  • 展示会やイベントにおける触覚体験の企画・設計
  • 企業や自治体との共同研究、実証実験への参加

私が大切にしたいのは、単に「当事者として意見を伝える」ことだけではありません。現場の方々と一緒に考え、実際に試し、使う人の反応を見ながら改善を重ねていくことです。

触覚デザインを、社会の選択肢に

触覚デザインは、頭の中だけで完成するものではありません。触ってみること、歩いてみること、迷ってみること、使う人の声を聞くこと。その積み重ねの中で形になっていくものだと思います。

私は、触覚を「一部の人のための特別なもの」ではなく、社会をより分かりやすく、安心できるものにするための選択肢として広げていきたいです。触覚の視点を取り入れることで、これまで気づかれにくかった課題や、新しい価値が見えてくるかもしれません。

おわりに——触覚で、人と社会をつなぐ

私は、触覚を通して社会とつながってきました。触覚は、私にとって生きるための感覚であり、人と関わるための手段であり、社会の中で新しい価値を生み出す可能性でもあります。

これからは、大学院での研究や制作、これまでのワークショップや展示の経験を、社会の中で実際の仕事につなげていきたいです。公共空間、施設、プロダクト、展示、ワークショップ、リサーチなどにおいて、触覚の視点を取り入れてみたい企業・団体・自治体の皆さまと出会い、一緒に新しい取り組みをつくっていけたら嬉しいです。

触覚で、もっと分かりやすく。触覚で、もっと安心できる社会へ──

触覚で、人と人がつながる未来へ──

私はこれから、その可能性を仕事として届けていきたいです。

興味のある方は、ぜひこちらまで!

連絡先

Email: hayavcchi9422@gmail.com

これまでの活動・実績

次回は、盲ろう者が働くうえで、どのような合理的配慮が必要なのかについてお伝えします✨

楽天市場およびAmazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

左側に「触覚で社会とつながる 盲ろう者として、これから仕事で届けたいこと」のタイトル。右側に、考え事をしている人のイラストが描かれている。

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この記事を書いた人

たばた はやと:触覚デザイナー
1997年東京生まれ、現在は横浜在住、京都芸術大学大学院に在学中。先天性盲ろう者。コミュニケーション手段は、接近手話・触手話・指点字・筆談など。趣味はマラソン・旅行・2人乗りのタンデム自転車。

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