中等度難聴ライターのナツです!
前回の記事では、「カフェで開かれた読書会に迷わず参加することができた」話を書きました。
なぜ迷わず参加することができたかというと、文字起こしの情報保障があったからです。
「聴覚障害者への情報保障」と言えば、手話を思い浮かべる人も多いと思います。
しかし中等度難聴(両耳約50dB)である私は、音声言語でコミュニケーションをとっていて
手話は大学生のときに学び始めたものの現在は日常的に使っているわけではないので、
手話だけでは全部理解することはできません。
音声でも全部はきき取れない、手話でも全部は読み取れない。
これがまさに、中等度難聴者の立ち位置であるように思います。
この記事では、あまり結びつくことがないように思われる「中等度難聴」と「手話」について、私の体験を書いてみたいと思います。
手話の表出
私は大学生のとき、ろう者である友人との出会いをきっかけに手話を学び始めました。
その友人に教えてもらったり、手話に関する本を読んだりして、少しずつできるようになっていきました。
ただ、ここで言う「できるようになっていく」とは、「知っている手話単語が増えていく」ということ。
私は、声で話す日本語に、知っている手話を語順通りに当てはめて表出しています。
「日本語対応手話」と呼ばれるものだと思います。
これは、日本語とは異なる独自の文法をもつ言語である「日本手話」とは全く違うものです。
手話の理解
大学卒業後、縁があってろう学校の教員となり
日常的に手話を使う日々が始まりました。
ろう学校は、耳のきこえない・きこえにくい子どもたちが通う学校です。
ろう・難聴の教員も多く勤めていたので、校内の職員会議や研修には必ず手話通訳者がいました。
私は、掴める情報は全て掴みにいくぞ! という勢いで、手話通訳者を一心不乱に見つめ内容を理解しようとしました。
すると、あることに気づきました。
私の頭の中には音声言語がベースとしてあるからでしょう、手話を読み取るとき、一度頭の中で音声への変換作業をしてから理解していることに。
そして会議や研修が終わると、目も耳も頭もグッタリ……。
私の体内では、このようなことが起こっていたのかもしれません。
- リアルタイムで耳に入ってくる音声をききながら
- きき取れない部分を前後の文脈などから予測しながら
- 目をカッと見開いて手話を読み取りながら
- 頭の中で手話→音声への変換作業をしながら
- 手元の資料をチラ見しながら
- 耳、目、頭、それぞれ異なるテンポで入ってくる/意味がわかる内容を、統合する。
こう書いてみると、なんだかものすごいことをやっているように見えますね(笑)
実際は、処理できずにパンクです。
内容は何も覚えていません。

発言者(声)、手話通訳者(手話)、資料(文字)。
本当は、私にとって一番わかりやすくストレスのない「文字」だけを読みたいけれど、情報量が多いのは「声」と「手話」。
でも声だけでは全部きき取れないし、手話だけでは全部読み取れない。
なんとか他の人と同じ情報量を仕入れるためには、中途半端であろうと全ての手段に頼るしかありません。
しかし、使用する感覚器官も提示されるテンポもバラバラな情報を全部キャッチし理解するなんてことは、超人の為せる技でした。
一方、教員同士の普段の会話では、私に対して
声を出しながら手話をつけて話してくれる方が多かったです。
そう、日本語対応手話です。それが非常にわかりやすかったのです!!
私は難聴だから視覚情報を頼りにしてはいますが、
難聴だから目で見る方が得意だったり、見たものはすぐに記憶できたりするわけでは、残念ながらありません。
視覚優位ではなく、「理解」は音声言語をベースに行っています。
でも「きく」だけでは全部理解することはできない……。
だから、声でききながら、その声と同時に表される手話を見ることで、聴覚と視覚から同時進行で情報を得ることができ、どちらかがわからなくてもどちらかで補足できるという日本語対応手話が、合っていたのです。
なので!!!!!
聴こえる方で、「手話はまだ練習中で……」「上手じゃなくて……」とおっしゃる方へ。
そんなあなたが、声で話しながら、ところどころに知っている手話をつける、その話し方こそ私にとってわかりやすかったりするのです。
執筆後記
簡単に語れるほど手話の世界を知らない身ではあるのですが、今回、思い切って手話について書いてみました。ここに書いたことは、あくまで私個人の体験・考えです。日本手話を話す中等度難聴者もいらっしゃるだろうし、日本語対応手話では理解しにくいと感じるろう・難聴者もいらっしゃると思います。
お互いにどのようなコミュニケーション方法であれば伝わりやすいかは、すぐにわかることではないですね。
話し合い、試行錯誤しながら、お互いに歩み寄っていければいいなと思います。


