情報保障は必要だけれど、人からもらったちょっとした心遣いが嬉しかったりする

中等度難聴ライターのナツです!

前回、前々回と「情報保障」をテーマに記事を書いてきました。

情報保障……年齢や障害の有無等に関係なく、誰でも必要とする情報に簡単にたどり着け、利用できること。

東京都福祉局 ハートシティ東京|情報提供の方法(情報保障)」より 

文字起こしの情報保障がある読書会に参加したこと

音声でも全部はきき取れない、手話でも全部は読み取れない私にとって、
聴覚と視覚から同時進行で情報を得ることができる 日本語対応手話がわかりやすかったこと

感音性中等度難聴(両耳約50dB)である私が、音声言語が中心となる環境で会話したり、働いたり、学んだりするためには
音声(そのものをきき取りやすくする
文字
の情報保障を必要としています。

音声……音響、ロジャーシステムなど
文字……字幕、リアルタイム文字起こしなど

それは必然的に、機器の力に頼ることになります。

となると、〈事前に機器を設置するなどの準備〉
〈相手の理解を得て協力してもらうこと〉
が必要であり

すぐに、どこでも、パッと気楽にできることではないので
少しもどかしいのです。
相手に迷惑ではないかな……と気を遣ってしまうこともあります。

そしてもちろん、機器を使えれば万事OK、ではありません。

スピーカーを通すことで音声が反響し、よりきき取りづらくなることもあります。
リアルタイム文字起こしは、スマートフォンのアプリでいつでもどこでも使用できて大変便利ですが、使用環境によっては精度がぐっと下がることもあります。

情報保障を受ける身としては、一字一句正確に知りたいという思いはあるので、
聴覚障害者のための機器がより高精度に、使いやすいものになっていけば……
手話だけでなく、音声自体をきき取りやすくすることや文字起こしの情報保障についても広まっていけば……
と願うばかりです。

でも、情報保障とは機器を使ってより多くの情報にアクセスできるようにすること、
それだけではないのかもしれない、と拡大解釈してみました。

思い返せば、「情報保障」と掲げてはいなくとも
人からもらった、ちょっとした嬉しい心遣いってあるよなあと思い、今回はそのことをシェアしたいと思います。

目次

難聴であることを打ち明けた友人が

私が「自分は中等度難聴で、耳が聴こえにくい」ということを人に伝えられるようになったのは、実は最近です。

ですが、私のきこえ方や、どういうふうに話してほしいかということを、そのたびに詳細に伝えられるわけではありません。

嬉しいのは、勇気を出して伝えたことを忘れないでいてくれること。そして

  • 横並びになっていても、顔をこちらに向けて話してくれる
  • きき返したときに、水が流れるようにもう一度文章ごと言い直してくれる
    (「たいしたことじゃないよ」と返されるのは悲しいし
     一単語だけ復唱されても「きき取れなかったの、その部分じゃない……」となることがある)
  • 店員さんが言ったことやアナウンスの内容を、さりげなく伝えてくれる

そういったことを自然にやってくれる友人がいて
どうしてそんなことができるんだろう、すごいなと思うのです。

コロナ禍の職場で

コロナ禍、マスクの着用が当たり前になってしまいました。
口形が見えないことでさらにきき取りづらくなり、とても辛かったことを覚えています。

そんな中、当時の勤務先では
私と話すときだけは、みんながマスクを下ろしてくれたのです。

会議で発言するために前に出てくる人は、マスクを下ろす、という決まりも作ってくれました。
マスクを下ろし忘れたまま話す人がいると、誰かが「〇〇さん、マスクマスク!」と声をあげてくれました。

少し複雑で長くなりそうな議題をもった方が、発言前に私のところに来て、メモを渡してくれました。
その人が発言するときに参照するつもりだった、カンペのコピーでした。
それをざっと読んでおくことで、よく理解することができました。

よく行く病院で

息子のかかりつけの小児科。
息子のカルテには、「お母さん 難聴」という付箋が貼ってあります。

ご年配の医師のお声はか細く、診察が嫌で息子が泣き叫ぶこともあるので
私は診察内容をきき取るのになかなか苦労します。

すると、隣にいる看護師さんが医師の話を大きな声で伝えてくれたり、メモ帳をさっと取り出して書いてくれたりします。

お会計で「〇番さんー」と口頭で受付番号で呼び出される病院では
私は受付の近くを陣取って、じっと受付スタッフの動向を見守ります。
私の番号を言っている気がする……行ってみるか?
スタッフさんが呼び出しているのに、誰も来ない……私かな?
と、そわそわすることが常でした。

妊娠中に通院していた産婦人科では
受付スタッフさんが私が難聴であることを覚えていてくれたので、
私の番号になるとマスクを下ろし、目を合わせて「あなたよ」と表情でメッセージを送ってくれました。

最後に

デジタル機器がどんどん便利になっていく世の中。

これはきき取りやすかった! 非常にわかりやすくて良かった! という具体的な情報保障手段はたしかにいくつかありますが、
「情報保障!」と銘打たなくても、人からもらったありがたい心遣いがたくさんあります。
「情報保障」と言って思い出すのは、案外こういったエピソードかもしれません。

中等度難聴者として生きていると、きき取れなくてもどかしいことや
みんなと同じ情報を得られなくて悔しいことが日々あります。

それでも、日々の中の有難いことに気づけるよう
心を落ち着け、目を向けることが、前向きに生きるためには大事ではないかなと思っています。

次回からは、がらっとテーマを変えてみようかと! お楽しみに。

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この記事を書いた人

生まれつき中等度難聴で18歳から補聴器ユーザー。
山登りとコーヒーと本と文章が好き。
ろう学校教員、学校図書館司書を経てライターに。
夫と息子と3人家族(難聴は私だけ)。

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