Deaf VRを全国へ。クラウドファンディングに挑戦しています
初めまして!
「Deaf VR」の開発を行う、株式会社シー・エヌ・エスの牧村 正嗣と申します。
現在、僕は「Deaf VR」を全国へ届けるため、クラウドファンディングに挑戦しています。
目標金額は330万円。
募集期間は2026年9月24日午後11時までです。
「聞こえる前提」を問い直したい!Deaf VR全国展開プロジェクト
いただいた支援金は、全国各地でDeaf VRの体験会を開催するための機材費や交通費、会場設営費などに活用します。
このプロジェクトは、目標金額を達成した場合のみ支援金を受け取ることができる「All-or-Nothing方式」です。
つまり、目標に届かなければ、全国展開のための資金を受け取ることはできません。
僕にとっても、覚悟の必要な挑戦です。
とはいえ、
「Deaf VRって、そもそも何?」
と思った方も多いのではないでしょうか。
Deaf VRは、「聞こえない・聞こえにくい世界」を360度映像と空間音響によって体験するVRコンテンツです。
体験するのは、単に音量が小さくなった世界ではありません。
言葉の一部が抜け落ちる。
周囲の音に紛れて、大切な声が聞き取れない。
まわりの人は普通に反応しているのに、自分だけ何が起きているのかわからない。
そうした日常の中で生まれる戸惑いや不安、周囲とのズレを、生活に近い場面を通して感じてもらうことを目指しています。
もちろん、Deaf VRを一度体験しただけで、ろう・難聴者の気持ちをすべて理解できるわけではありません。
聞こえ方も、その人が置かれている状況も、感じることも一人ひとり違います。
僕たちが目指しているのは、「聞こえない世界をわかったつもりになること」ではありません。
僕たちの社会が、無意識のうちに「誰もが聞こえること」を前提につくられている。そのことに気づき、身近な人と考え、話し合うための入口をつくることです。
2018年に制作を始めてから、首都圏を中心に企業や学校、自治体のイベントなどで体験会を開催してきました。これまでにDeaf VRを体験してくださった方は、約2,800人になります。
この体験を、首都圏だけでなく全国へ届けたい。
そのための第一歩が、今回のクラウドファンディングです。
では、そもそも僕は、なぜDeaf VRを作ろうと思ったのか。
すべての始まりは、生まれつき耳が聞こえにくい、僕の娘でした。
すべては、娘の難聴から始まりました
僕の娘は、生まれつき耳が聞こえにくい「先天性感音難聴」です。
娘が生まれたのは、2016年。
生まれてすぐに受けた新生児聴覚スクリーニング検査で、「リファー」という結果が出ました。
再検査が必要だという意味です。
当時の僕は「リファー」という言葉さえ知らず、何が起きているのか、すぐには理解できませんでした。
娘は、どのくらい聞こえていないのだろう。
これから、どのように成長していくのだろう。
学校や友達、将来の仕事はどうなるのだろう。
親として、何をしてあげればよいのだろう。
まだ小さな娘を前に、わからないことばかりが次々と浮かんできました。
僕の中にあったのは、「聞こえない・聞こえにくい世界」に対する、漠然とした不安だったのだと思います。
だから、まずは知ることから始めました。
本を読み、いくつものろう学校を訪ね、乳幼児相談にも通いました。先生や、同じように難聴の子どもを育てている家族から、たくさんの話を聞きました。
その中で、聞こえない・聞こえにくい子どもたちは、決して「かわいそうな存在」ではないことを知りました。
手話や文字、表情、身振りなど、音声だけではない方法を使いながら、それぞれのやり方で人とつながり、毎日を生きています。
一方で、娘と過ごしながら、少しずつ見えてきたこともありました。
それは、僕たちの暮らす社会が、思っていた以上に「聞こえること」を前提につくられているということです。
駅で流れるアナウンス。
病院で名前を呼ばれること。
レストランで店員さんから声をかけられること。
学校で、まわりの友達が一斉に笑った理由。
聞こえる人にとっては、意識することさえない日常の一場面です。
けれど、聞こえない・聞こえにくい人にとっては、そこにいるのに情報だけが届かず、自分だけ状況がわからない瞬間になることがあります。
それまでの僕は、音声で情報が届くことを当たり前だと思っていました。
娘の難聴を通して初めて、その「当たり前」が、すべての人にとっての当たり前ではないことに気づいたのです。
この世界を、聞こえる人にも伝える方法はないだろうか。 この問いが、Deaf VRの原点になりました。
耳栓だけでは、伝えられない
娘とろう学校に通う中で、僕は耳栓を使った難聴体験に参加したことがあります。
耳栓をして、音が小さくなった状態で会話をしてみる。
普段は意識していない「聞こえること」について考えるきっかけとして、意味のある体験だったと思います。
ただ、実際に体験してみると、僕の中には違和感が残りました。
耳栓をしても、音は思っていた以上に聞こえます。
音は耳だけで感じるものではなく、振動として体にも伝わってきます。
さらに、聞こえる人には、それまで音声を聞いてきた経験があります。
会話の一部が聞き取りにくくても、前後の流れや、過去に聞いた言葉の記憶から、無意識に内容を補うことができます。
これでは、実際の「聞こえない・聞こえにくい世界」を伝えることは難しい。
そう感じました。
そもそも僕が伝えたかったのは、単に「音が小さくなること」や、「聞こえないことの大変さ」ではありません。
聞こえる人たちが普段意識することのない、「聞こえることを前提にした社会」そのものでした。
自分だけアナウンスに気づかない。
まわりの人が笑っている理由がわからない。
話しかけられていることに気づかず、無視したと誤解される。
そうした状況を、説明するだけではなく、もっと生活に近い形で感じてもらうことはできないだろうか。
そこで思いついたのが、VRでした。
僕は20年以上、映像制作の仕事に携わってきました。
そして勤務する株式会社シー・エヌ・エスには、VRをはじめとした体験型コンテンツを制作する技術がありました。
僕が感じていた問題意識と、これまで培ってきた映像制作の経験、会社が持つVRの技術。
それらが重なったとき、
「ないのなら、自分たちで作ってみよう」
と思いました。
もちろん、VRで聞こえない・聞こえにくい人の世界を完全に再現することはできません。
一人ひとり聞こえ方は違いますし、同じ場面でも感じ方は異なります。
それでも、聞こえる人が自分の「当たり前」を見つめ直す入口にはできるかもしれない。
そうして、Deaf VRの制作が始まりました。
「なるほど」がくれた確信
Deaf VRの体験会を始めてから、僕は多くの方がVRヘッドセットを外す瞬間を見てきました。
体験を終えた方は、少し考えるような表情を浮かべ、大きく息をついてから、
「なるほど」
と口にすることがあります。
その一言を聞くたびに、僕は少しだけ胸をなで下ろします。
もちろん、短いVR体験だけで、聞こえない・聞こえにくい人のことをすべて理解できるわけではありません。
それでも、その人の中に、それまでなかった視点が生まれたのかもしれない。
自分が当たり前だと思っていた「聞こえること」を、初めて意識してもらえたのかもしれない。
そう感じるからです。
体験後には、
「初めて、自分のこととして考えられました」
「説明を聞くだけのときとは、感じ方が違いました」
「学校や会社の人にも体験してほしいです」
といった感想もいただくようになりました。
中には、聞こえにくい家族がいる方から、
「家族が見ている世界を、少しだけ想像できた気がします」
と言っていただいたこともあります。
知識として知ることと、自分がその場にいるように感じることは、同じではありません。
体験したあとに感じたことを言葉にし、誰かと話す。
その小さな対話が、自分の中にある「聞こえる前提」に気づくきっかけになります。
Deaf VRには、その入口をつくる力がある。
体験者の皆さんの反応を重ねるうちに、僕は少しずつ、そう確信するようになりました。
一度止まったからこそ、続けられる形にしたい
Deaf VRの体験会は、企業や学校、イベントなどへ少しずつ広がっていました。
しかし、そんな中で新型コロナウイルスが流行します。
人が集まり、同じ場所で体験することで価値が生まれるDeaf VRにとって、コロナ禍の影響は大きなものでした。
体験会はほとんど開催できなくなり、活動は止まりました。
「このまま終わってしまうのかもしれない」
そう考えたこともあります。
再び動き出すきっかけになったのは、東京でのデフリンピック開催が決まったことでした。
東京都や東京都ろう者連盟の皆さんから声をかけていただき、体験会を開催する機会が少しずつ戻ってきました。
そこで体験者の反応を目の前にし、改めて思いました。
やはり、この体験を必要としている人がいる。
ありがたいことに、その後は全国からも体験会について相談をいただくようになりました。
一方で、「予算がない」「無償ならお願いしたい」という声も少なくありません。
その事情はよくわかります。
けれど、機材の準備や更新、スタッフの移動、会場設営、新しいコンテンツの制作には、人の時間と技術、そして費用が必要です。
無償で届け続けることには限界があります。
僕が目指しているのは、一度きりの活動ではありません。
5年後も、10年後も、日本のさまざまな地域でDeaf VRを体験できる状態をつくることです。
だからこそ、Deaf VRを一時的な取り組みではなく、持続可能な事業として育てていきたい。
社会に必要なものを、必要な人へ届け続けるためには、続けられる仕組みが必要です。
今回のクラウドファンディングは、その仕組みをつくるための第一歩でもあります。
クラウドファンディングは、全国へ届けるための第一歩
今回のクラウドファンディングには、体験会を開催するための資金を集めることに加えて、もう一つ大きな目的があります。
それは、Deaf VRの考えに共感し、この体験を一緒に広げてくださる方とつながることです。
Deaf VRを全国へ届けるためには、機材やスタッフを各地へ運ぶだけでは足りません。
体験する場所をつくり、地域の方と調整し、体験後に感じたことを話し合える場まで育てていく必要があります。
僕たちだけで、すべてを実現することはできません。
「自分の地域でも開催してほしい」
「子どもたちに体験してほしい」
「学校や職場で、聞こえることについて考えたい」
そんな一人ひとりの思いとつながることで、Deaf VRは全国へ広がっていくのだと思います。
企業へ。
学校へ。
自治体へ。
そして、まだDeaf VRを知らない人のもとへ。
聞こえない・聞こえにくい世界について、知るだけで終わるのではなく、感じたことを誰かと話し、自分の身近な環境を見直す。
そんな機会を、日本各地につくっていきたいと考えています。
クラウドファンディングの達成は、ゴールではありません。
Deaf VRを全国へ届け続けるための、スタート地点です。
この体験を、日本中の当たり前に
娘の難聴がわかった頃、僕の中にあったのは、わからないことへの不安でした。
けれど、娘と一緒に過ごし、ろう・難聴の方々と出会う中で、僕の問いは少しずつ変わっていきました。
「娘は、この社会で大丈夫だろうか」から、
「聞こえることを前提にした社会を、どうすれば変えていけるだろうか」へ。
その問いと向き合い続ける中で生まれたのが、Deaf VRです。
Deaf VRは、聞こえない・聞こえにくい世界を完全に理解するためのものではありません。
自分が当たり前だと思っていたことに気づき、誰かと考え、話し合うための入口です。
今、僕は新たな問いに向き合っています。
この体験を、首都圏だけでなく、日本中で体験できるものにできるだろうか。
まだ、その答えはわかりません。
けれど、一人では実現できないことだからこそ、多くの方と一緒に挑戦する意味があると思っています。
クラウドファンディングは、2026年9月24日午後11時までです。
ご支援はもちろん、プロジェクトやこの記事を身近な方へ伝えていただくことも、大きな力になります。
もし、僕たちの思いに共感していただけましたら、この挑戦を一緒に育てていただけるとうれしいです。
聞こえることを前提にした社会を、少しずつ問い直していく。
Deaf VRを全国へ届けるため、ここから新しい一歩を踏み出します。
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