名刺に聴覚障害であることを入れたきっかけ
みなさんは、仕事先で聴覚障害のことを伝えていますか?私は職場の方には伝え、できるだけコミュニケーションが取れるようにお願いしていますが、取引先の方については下記のような理由でうまく伝えられず、若干困っていました。
①最初に伝えた方が良いと思っても、複数人と名刺交換すると伝えるタイミングが難しい
②難聴であることは伝えられても、「ゆっくり・はっきり話して欲しい」などお願いしたい対応までは言い出しにくい
③初回の打ち合わせを静かな場所で行ったため困ることがなく、伝えるタイミングを逃す
④説明したものの、「さかしたさん自身のことだと思って聞いていなかった」と、伝わっていないことがあった
⑤A社のBさんには伝えたが、別の機会にお会いしたCさんには伝えてないなどがあり、徐々に誰に伝えたのか把握できない状態になっていた
伝えなくても難聴があると気付いていた方はいると思いますが、「なんか、反応が悪い人だな」と感じていた方もいるでしょう。それなら名刺に聴覚障害のことを入れたら良いのかな?とは思ったものの、表記の仕方によっては「いつから耳が悪いの?」「原因はなんなの?」など、私にとっては聞かれたくないことまで聞かれる可能性があり、「入れる!」と積極的になったり、「でもやっぱり……」と消極的になっていました。
ただ、「入れる!」の気分の時に数名の方に話したところ、「良いと思う!」と言ってもらったことがきっかけで、「嫌なことがあったら、元に戻したらいいか」と気楽に考えられるようになり、入れることにしました。
聴覚障害の説明をどうするか
最初は耳マークのみを入れる予定でしたが、周囲に伝えたところ「認識不足で申し訳ないけど、障害者雇用の部門に異動して耳マークを知った。知らない人が多いと思う」という意見や、「(障害者雇用の仕事をしている)さかしたさんが使うと、耳マークの普及目的だと思う人もいるのでは?」との意見もありました。
そこで、耳マークで耳が不自由なことを表し、説明文は「会話はゆっくり、はっきりお願いします」と、私がしてもらいたい対応を表記することにしました。
ただ、作成途中で「説明文は、“声に気づかなかったり、聞こえにくかったりします”とした方が良い」と、数名の方に言われました。名刺を受け取った相手が理解しやすい説明だとは思いますが、この説明では「ゆっくり・はっきり話して欲しい」という私の希望は全く伝わらないので、スペースの都合もあり、折衷案で「聞こえにくい場合があります。ゆっくりお話しください」に落ち着きました。今回に限った話ではありませんが、相手が欲しい情報と当事者である私が伝えたい情報のバランスが難しいなと思います。
もう一つ、「聴覚障害」「難聴」を入れるかどうかも迷いましたが、私は今回は入れませんでした。難聴についてあれこれ聞かれるのではないか?という警戒心と、仕事で使う名刺なので、補聴器や文字起こしアプリなどを全くご存じなく、「仕事を頼んで大丈夫なのかな?」と、相手を心配させるリスクを考えてです。
耳マークの利用申請
次に耳マークの利用についてですが、耳マークは「一般社団法人 全日本難聴者・中途失聴者団体連合会」が作成・啓発活動を行われています。利用する際は許可を取る必要があるため、利用申請書を提出し許可をもらいました。
私は「耳マーク活用事例」としてホームページに画像掲載されることは避けたかったので、仕事の際に個人的に使うことを説明し非公開にしていただいたのですが、非常に丁寧でスピーディな対応をしてくださり助かりました。
最終的に完成したのは、こんな感じの名刺になります。実際は住所や電話番号がもう少し大きく、耳マークと説明文は半分くらいのスペースですが、お渡しした際に視界に入る大きさにはできたと思います。

使用してみた感想
実際に使用してみてまだそれほど経ちませんが、名刺交換の際に難聴について説明する時間があまり取れない状況に変わりはなく、良い方向に行っているとは思いますが、コミュニケーションがすごく取りやすくなったかというとそうでもありません。
ただ、福祉職などで耳マークをご存じの方は、ゆっくり話してくださる方がほとんどです。おそらくご存じない方は、耳マークを認識していないというか、耳マークに注意が向いていない印象です。それでも、聞き返すときに「すみません。名刺に入れている通り聞こえにくくて……。もう一度お願いできますか?」と伝えると、“そういうことね!”と非常に納得した表情で、ゆっくり話してくださいます。
難聴についてあれこれ聞かれることを心配していましたが、今のところ1回だけと思ったより聞かれずに済んでいます。ただ、仕事先の方なので嫌な顔もしにくいですし、内容によってはモヤっとした気持ちをしばらく引きずるので、私の中ではやはり重要なポイントです。
終わりに
名刺に聴覚障害のことを表記してみましたが、まだ使い始めたばかりで続けて使うかは決めていません。メリット・デメリットを比較できるくらい使ってから、説明文の変更も含め考える予定です。
難聴であることが気にならない日も、なんだか気になる日もありますが、一方的にならないよう周囲の方の意見も聞きつつ、無理せず肩の力を抜いて、自分なりに働きやすい環境を作っていけたらと思っています。
このブログを書きながら、「こんな風に名刺に表記している」、「仕事先にはこのタイミングで伝えるようにしている」など、他の方が工夫されていることも聞いてみたいなと思いました。そういった機会が今後あれば、どうぞよろしくお願いします。
参考資料