障害者雇用促進法と合理的配慮
こんにちは。前回の職場でのセルフケアは試してみましたか?
気温が下がっているので、暖かい飲み物を飲んだりして体が冷えないように気をつけてくださいね。
今回は障害者雇用促進法について書こうと思います。合理的配慮についても説明しますので、ぜひ最後までお読みください。
障害者雇用促進法―雇用率について
障害者の就労を促進するための法律が、「障害者雇用促進法」です。
以下の図1はこの法律の概要ですが、職業リハビリテーションの推進、障害者に対する差別の禁止、対象障害者の雇用義務等に基づく雇用の促進等が定められています。
(図1:厚生労働省ホームページ)
この中で、事業所には障害のある方を一定以上の割合で雇うことが定められており、これを「法定雇用率」といいます。今年、令和6年4月から法定雇用率が民間企業は2.5%に上がり、令和8年7月から2.7%に上がることが決まっています。
このような状況ですので、平成25年度には77,883件だったハローワークを通じた就職件数は、令和5年度は110,756件と確実に増加しています。もちろん、「お願いできる仕事がない」「サポート体制がないから受け入れができない」などの理由で、雇用に消極的な事業所も残念ながらあります。でもそれ以上に、SDGs、共生社会の実現といった理念を持ち、採用・定着活動を続けている事業所もたくさんあるので、安心していただきたいと思います。
注意していただきたいのは、法定雇用率にカウントできるのは、「障害者手帳」を持っている方のみで、障害者手帳を所持していない難聴の場合、法定雇用率へのカウントはできません。ただし、合理的配慮の提供は対象となります。
障害者雇用促進法―合理的配慮について
今年、令和6年4月1日に改正障害者差別解消法が施行され、事業者による障害者への合理的配慮が義務化されましたが、障害者雇用促進法では平成28年4月1日より従業員への合理的配慮を義務化しています。こちらは事業主用パンフレットですが、改正ポイントは3つあります。
改正障害者雇用促進法が施行されましたー改正のポイント
① 雇用分野での障害者差別の禁止:障害者であることを理由とした障害のない人との不当な差別的取り扱いが禁止されています。
② 雇用分野での合理的配慮の提供義務:障害者に対する合理的配慮の提供が義務付けられています。
③ 相談体制の整備・苦情処理、紛争解決の援助:障害者からの相談に対する体制の整備が義務付けられています。障害者からの苦情を自主的に解決することが努力義務とされています。
対象となる事業主の範囲は、事業所の規模・業種に関わらず、すべての事業主が対象となります。そして、対象となる障害者は、障害者手帳を持っている方に限定されません。身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能に障害があるため、長期にわたり職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な方が対象となります。
「障害者手帳がないと、合理的配慮の提供を受けることができない」と思われている方もいらっしゃいますが、実際は障害者手帳の有無は関係なく、聴覚障害のため働く上で制限を受けている方などは対象となります。私も障害者手帳は持っていませんが、電話業務を一部外してもらったり、席を端にしてもらうなどいくつかの配慮を受けて働いています。
上記のパンフレットには、「障害の種類によっては、見た目だけではどのような支障があり、どのような配慮が必要なのか分からない場合があります。また、障害部位・等級が同じであっても、障害者一人ひとりの状態や職場環境などによって、求められる配慮は異なり、多様で個別性が高いものである点に留意が必要です。具体的にどのような措置をとるかについては、障害者と事業主とでよく話し合った上で決めていただく必要があります」とありますが、配慮内容を決める際は話し合いが非常に大切になります。
例えば、「聴覚障害なら手話だよね」「大きな声で話したら良いんでしょ」など、先方から配慮を提案されたとしても、手話がわからない方もいますし、大きな声よりもゆっくり・はっきり話してもらった方が良いという方もいらっしゃると思います。こんな風に配慮内容というのは本当に人それぞれで、「聴覚障害だから〇〇する」と一律に配慮を提供されそうになった場合は、遠慮せずに自分に必要な配慮を申し出て話し合ってほしいと思います。
また、事業主に希望した配慮が過重な負担であるとして提供されない場合、事業主はその理由と代替案をご本人へ伝える必要があります。こういった話し合いは非常に気を遣い疲れるものですが、自分にその権利があることを忘れないでほしいです。
とはいえ、中途障害の場合など、どのような配慮を希望したらよいのか?どう伝えたらよいのか?と迷うと思いますので、次回は事業所内ではどのような合理的配慮が行われているのかについて、厚生労働省が作成してる合理的配慮指針事例集を使って詳しくご紹介します。
参考資料 厚生労働省 「令和5年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめを公表します」
厚生労働省 「障害者雇用対策」