キコニワから未来を生きるろう・難聴に送る、
ろう者・難聴者版の職業図鑑。
あなたの目指す働き方のヒントに。
さまざまな職種のろう、難聴者にインタビューを行い
職業紹介の記事を連載します。
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料理人(パティシエ・シェフ)
森井 浩司(もりい・こうじ)
‐ 愛媛県出身
きこえについて
生まれつき耳が聞こえない。(感音性難聴)
保育園と小学校は地域の学校に通い、中学校・高等学校はろう学校、卒業後は専門学校へ進学。
普段は補聴器を装用し、手話と音声日本語の両方を活用して生活している。

基本情報
料理人(パティシエ・シェフ)
鉄板居酒屋で料理人として働く。
(主な業務)
・料理の仕込み
・鉄板焼きの調理(ライブキッチン)
・スイーツづくり
森井料理を提供しながら、お客さまとのコミュニケーションを楽しむことも、仕事のひとつです!
1日の流れ

料理人になるには
一般的なケース
調理師専門学校などで料理の基礎を学んだり、飲食店に就職して働きながら技術を身につけたりする。
その後、レストランやホテル、カフェ、菓子店などで経験を積み、専門とする料理のジャンルを深めていく。
経験を重ねた後、料理長を目指したり、自分の店を開いたりするなど、さまざまな道があります。
森井さんの場合
専門学校(大阪調理製菓専門学校)で学んだ後、ケーキ屋、レストラン、カフェなど、さまざまな飲食店で経験を積む。
当初はパティシエを目指していたが、幅広いことに挑戦したいという思いから、料理や菓子づくりなどさまざまな経験を重ねる。
現在は鉄板居酒屋で料理人として働き、16年間にわたり料理の世界で経験を積んでいる。


こんな人が向いている!
① 料理やお菓子づくりが好き
料理やお菓子をつくること自体を楽しめる人。
「好き」という気持ちが、仕事を続ける原動力になる。
② 人を喜ばせることが好き
料理を食べたお客さまの笑顔や、「おいしい」という言葉を嬉しく感じられる人。
人と会話したり、喜んでもらったりすることを楽しめる人に向いている。
③ 失敗してもあきらめない
味が濃すぎたかななど、思ったように料理が仕上がらないときも、原因を考えて次に活かせる人。
失敗を重ねながら、最後まで努力できることが大切。
求められるスキル、必要な知識
① 料理への情熱
お客さまに「おいしい」と喜んでもらえる料理をつくるために、味や反応をしっかり見ながら腕を磨き続ける姿勢。
「もっとおいしい料理をつくりたい」という情熱が、技術の向上につながる。
② コミュニケーション力
お客さま一人ひとりの好みや感想を聞き、満足してもらえる料理や接客につなげる力。
ライブキッチンでは会話も仕事の一部になるため、本やニュースなどから幅広い知識を身につけ、会話の引き出しを増やしておくことも大切。
③ メンタルの強さ
仕事では、厳しい上下関係や、思うようにいかないこともあります。
ときには厳しい言葉を受けることもありますが、そこで心が折れず、立ち向かう勇気や精神力が必要。
④ 製菓衛生師免許などの資格
製菓衛生師免許などの資格を取得することで、仕事の幅が広がる。
将来自分のお店を持つなど、目指す働き方によって必要な資格を身につけておくことも大切。
スキルアップのためにしていること
・飲食店を巡って研究
さまざまなカフェや飲食店を訪れ、料理やスイーツ、コーヒーの味や見た目、食材、調理方法などを研究し、自分の料理に取り入れています。
・会話や伝え方を学ぶ
あらゆるお客さまとの会話を楽しめるよう、ニュースや社会問題、日本語の意味や使い方などを学び、会話の引き出しを増やしています。料理をよりおいしく味わってもらえるよう、料理の説明の仕方も工夫しています。

誕生日プレゼントでくれたお菓子のレシピ本がパティシエへの夢を膨らませた
教えて!センパイの経験談
この仕事を始めたきっかけ
亡き母の想い
――現在の仕事を始めたきっかけを教えてください。
森井中学生の頃、先生から「将来の夢」について聞かれたことがあり、やりたいことがたくさんある中で、話していくうちに、自分は料理が好きなんだと改めて気づきました。
そして、先生との対話を通して「いつかパティシエになりたい」という夢が中学生の時点で明確になり、勉強にも前向きに取り組めるようになりました。
もう一つ大きかったのが、幼い頃に亡くした母の存在です。
母自身も料理が大好きだったと祖母や叔母から聞き、「もっと生きて、料理をつくりたかったのではないか」と思うようになりました。
母の分まで精一杯生きることが、親孝行にもなるのではないか。そんな思いも、パティシエを目指すきっかけになりました。
思い出のお手伝い
――亡き母の存在が大きかったんですね。
森井そうですね。幼くして母を亡くした経験もあり、人との出会いは人一倍大切にしていると思います。
今では、自分の料理を気に入って通ってくださるお客さまとの出会いも大切にしています。いつかその方が亡くなったとしても、残された家族が店を訪れたときに、「この人はよく来てくれていた」「こんな料理が好きだった」と伝えられる。
それも料理人の仕事だと思っています。

嬉しい瞬間
料理の一期一会
――仕事で嬉しいと思う瞬間はありますか。
森井お客さまが料理を食べて「おいしい!」と笑顔になってくれる瞬間が、一番嬉しいです。そうした反応が、自分の料理への自信にもつながっています。
料理は、食べることで笑顔になったり、涙が出たり、幸せな気持ちになったりと、人それぞれの思いを生み出すもの。
過去に「料理は一期一会みたいなものよ」という言葉を聞いたとき、一つひとつの出会いを大切にしながら、飲食の仕事を続けていこうと思いました。
悩んだこと、悩んでいること
うまく伝えられなかった過去
――仕事をしていくうえで悩んだことはありますか。
森井最初に働いたケーキ屋では、コミュニケーションの壁にぶつかりました。
当時は、自分の聞こえ方や必要な配慮をうまく伝えられず、職場の人に迷惑をかけているように感じ、孤立感から退職した経験があります。
自分を知り、そして伝える
――その後、どのように変わっていったのでしょうか。
森井転職や人との交流を重ねる中で、少しずつ自分の聞こえ方や、必要な配慮を伝えられるようになりました。
例えば「タイマーの音は聞こえないので、鳴ったら教えてほしい」と具体的に伝えることで、相手から「光るタイマーに変えよう」と提案してもらえたこともあります。
できないことを素直に伝えることが、周りの人と一緒に働きやすい環境づくりにつながると思っています。
きこえる人との会話の仕方
堂々と必要な配慮を伝える
――きこえる人と働くときはどういった工夫をされていますか?
森井聞こえないことを恥ずかしがらず、堂々と自分の状況や必要な配慮を伝えることが大切だと思っています。
現在は、お客さまの目の前で料理をするライブキッチンスタイルの居酒屋で働いています。
ここでは、聞こえないことを理由にコミュニケーションを避けるのではなく、聞き取れないときも自分から伝えるようにしています。
注文を受ける際にも、「メニューを指差してもらっていいですか?」と素直に伝えています。聞こえないことを隠さず堂々とすることが、お客さまとのコミュニケーションや、お店の雰囲気づくりにもつながっています。

学生時代の印象的な出来事
クラスのムードメーカー
――13歳の頃はどんな性格でしたか。
森井やんちゃで、生意気な子どもでした。(笑)
人を笑わせることが好きで、みんなの中ではムードメーカーのような存在だったと思います。
分からないことをそのままにしない
――記憶に残っている出来事はありますか。
森井学生時代は、料理やお菓子の研究をしたり、遊戯王カードの大会に出たりと、興味を持ったことには夢中になるタイプでした。
遊戯王カードでは、カードに書かれた漢字の読み方や意味を調べることもあり、遊びながら学んでいたと思います。
中学校からろう学校に通い始めたのですが、当時は手話がまったくできませんでした。分からないことをそのままにするのが嫌だったので、友達に教えてもらいながら少しずつ手話を覚えていきました。
今思えば、この頃から「分からないことを分からないままにしない」という性格があったのかもしれません。

学生時代にしておくべきこと
先生との関わりを大切に
――森井さんが思う、学生時代にしておくべきことは何でしょうか。
森井先生とのコミュニケーションを大切にすることだと思います。
たとえ自分と合わない先生であっても、その先生が持っている知識や経験を吸収しようとする姿勢が大切だと思います。
私自身、高校生のときに先生から「無知の知(不知の自覚)」という言葉を教えてもらいました。当時はその意味を知らなかったので、自分で調べて意味を知りました。
高校生のうちにこのような深い言葉に出会えたことは、今振り返ってもよかったと思いますし、教えてくれた先生に感謝しています。
学生時代に関わる身近な大人だからこそ、先生との出会いや会話を大切にしてほしいと思います。

さいごに…
座右の銘
日ごろから心に留めている言葉を聞くことで
その人となりや、その人の歩んできた道が
垣間見えると思い、聞いてみました!
「継続は力なり」「無知の知(不知の自覚)」
――最後に座右の銘を聞かせてください!
森井「継続は力なり」と「無知の知(不知の自覚)」です。
――その言葉にはどんな意味が込められているのでしょうか?
森井「継続は力なり」は、中学生の頃から大切にしている言葉です。
当時、毎日の勉強や部活動を続ける意味が分からなかった私に、教頭先生が、小さなことでも続けていけば、それが積み重なって自分の力になると教えてくれました。それ以来、少しずつでも続けることを大切にしています。
「無知の知(不知の自覚)」は、高校2年生のときに先生から教えてもらった言葉です。最初は意味が分からず、自分で調べたり先生に聞いたりする中で、「自分が知らないことを知ることが、学びの始まりなんだ」と理解しました。それ以来、分からないことをそのままにせず、調べたり、人に聞いたりすることを意識しています。
どちらも、今の自分の「学び続ける姿勢」につながっている大切な言葉です。
料理人を目指しているあなたへ
「料理、ケーキ、お菓子を作りたい!」という気持ち、素晴らしいと思います。
もちろん私も初めはうまくいきませんでした。失敗と成功の繰り返しで悔しさもあり、落ち込んだこともありました。でも、「美味しい!」という言葉に感動しては、何度も救われてきたので幸せなことだと思います。
料理、ケーキ、お菓子はただ作るだけではありません。気持ちを込めて作り、お客さまに提供することができる仕事だと私は思います。だからこそうまくできない、自信がないという気持ちもあるかもしれませんが、好きという気持ちは大切にして欲しいです。初心を忘れず、自分らしく料理、ケーキ、お菓子を“表現”するといいと思います。
料理人、パティシエを目指す方みんな応援しています!


