キコニワライターのFubukiです! 私は2023年第5回ろう者フットサル世界選手権大会に日本代表メンバーとして出場しました!
4年に一度しかない世界大会。2025年には東京でデフリンピックが開催されることもあり、今回はデフフットサルW杯に出て感じたことを、選手視点からありのままに書こうと思います。
参加国は?
男子
-日本
-タイ
-イラン
-クウェート
-ブラジル
-アルゼンチン
-パラグアイ
-スイス
-スウェーデン
-チェコ
-ブルガリア
-トリニダード・トバゴ女子
女子
-日本
-ドイツ
-ブラジル
-イングランド
-アイルランド
-アルゼンチン
女子は参加国が2カ国減って開催されました。
2024年3月にトルコで開催される冬季デフリンピックにフットサル競技も加わることが決まり、短期間で国際大会が2回開催されることになりました。 一般的にはデフリンピックの方が大会の価値が高いと考えられているため、W杯は辞退してデフリンピックのみに出場するという方針の国もあったようです。(男子はヨーロッパ予選1位と2位のスペインとイタリアが不参加)
各国の金銭事情は詳しくまでは把握していないですが、金銭的に片方のみに出場という国もあったようです。日本はまだまだデフスポーツはマイナースポーツなので、国からの助成金や協会のお金だけでは賄えず、フットサルに関しては自腹で参加しているのは日本のみのようです。
使用言語は何?
国際手話で会話できる選手がほとんどでした。
国際手話ができる選手が少なかったのは、日本とアイルランドぐらいではないかと思います。
運営も基本的には国際手話ができる人がほとんどだったので、東京デフリンピック開催に向けて、国際手話ができる人を増やすのは急務だと感じます。
アイルランドはほぼ全員が人工内耳で英語でペラペラ会話してたのも大変興味深かったです。
大会会場の様子
1試合目の会場は、この日しか使われない会場。
朝8時に試合開始だったので、7時過ぎには会場に着いたが、運営担当者が遅れて着いてから入れました。
また、対応もここでとりあえず試合して結果だけ教えてといったような、まるで練習試合のような雰囲気だったのを覚えています。
もちろん、朝早いことも会場の雰囲気も関係なく、切り替えて自分たちで雰囲気を作って試合に臨みましたが、4年に一度の国際大会。東京デフリンピックではこのようなことがないといいなと感じたのも事実です。
開会式が行われた会場で3試合。
コーナーキック付近は狭かったものの全体的には広く、良い会場でした。
しかし、平日に試合だったということもあり、観客はほんの一握りでした。
ベスト4からはさらに大きな会場。
コンサートホールなどにも使われている市内でも有数の会場で、準決勝の時の観客の入りは相変わらずの少なさだったが、決勝の時はかなりの観客が来ました。
男子決勝は消極的な試合展開にブーイングが起こったり、、
女子決勝(日本vsブラジル)では、男子日本代表も応援に駆けつけ、日本コールを送りました。
すると、他の国の選手が応援に加わってくれたり、こちらが日本コールをするとブラジルサポーターが負けじと声を出して応援合戦が始まったり、これぞ世界大会だという景色がそこにはありました。
ブラジルはサッカー王国と言われ、ブラジル代表の有名選手である「ロナウジーニョ」や「ネイマール」もサッカーと並行でフットサルもやっていたと言われています。それぐらい日常からフットボールに親しみがある国だからこその雰囲気かもしれませんが、例え音が聞こえなくても音がわかるぐらいの最高な雰囲気を日本でも作り上げていきたいと思いました。
結果は?
グループリーグ1戦目
vsブルガリア(3-1 勝利)
前半に先制されたものの、後半残り5分で同点に!
その後、さらに2点決めて逆転勝利!
攻めているのになかなか点が取れず、もどかしい時間帯が続きましたが、大事な初戦を勝利で終われて良かったです。
グループリーグ2戦目
vsタイ(3-1 勝利)
フットサルが盛んな国であるタイと対戦!
先に2点を先制すると、タイは前半からパワープレー(GKがFPになって5人で攻める戦術)を開始!
さらに追加点を取り、1点返されるも3-1で勝利!
数的不利な状況なので、パワープレーをされる側の守備ってとても疲れるんです…。
25分間パワープレーをされ続けるというタフな試合でしたが、無事勝利してグループリーグ突破が確定!
グループリーグ3戦目
vsアルゼンチン(5-4 勝利)
勝利すれば、自力でグループリーグ首位突破できる試合となったこの1戦。
幸先よく先制したものの追い付かれ、その後流れに乗れなかった日本は立て続けに失点。前半を1-4 で折り返します。
それでも切り替えて後半に入ると、立て続けにゴールを決め、ついに逆転!
パワープレーにも耐え、なんとか辛勝をおさめました。
国の相性ってやっぱりあって、日本は南米の独特のリズムというかそういうのが苦手だなと改めて感じました。それでも、この逆境から逆転できたのは、力がある証拠なので自信になりましたし、この勝利で改めてメダルに向けていい流れを作る事ができました。
決勝トーナメント1回戦
vsスイス(3-0 勝利)
2019年スイスW杯準優勝国のスイスと!これに勝てばベスト4が決まる試合。
日本は、試合開始1分で幸先よく先制。その後ビッグチャンスを迎えるも決めきれず前半終了
後半も相手の固い守備に苦戦していたが、一瞬の隙をついて追加点!
たちまち相手はパワープレーを開始。
すると、パワープレーのミスを逃さずにさらに追加点を決めて3-0で勝利!
初のベスト4進出を決めました。
準決勝
vsスウェーデン(0-5 敗北)
勝てばメダル確定。相手はヨーロッパ予選3位のスウェーデン。日本よりも体格が大きく、日本が苦手なフィジカル勝負でガンガン攻めてくる相手でした。
日本は開始早々、自分たちの失点してしまうと、さらに追加点を決められ、0-3。チャンスはあるものの決めきれず、前半終了間際にパワープレーを開始。その後後半に入るも、パワープレーを失敗してしまい、0-5で敗北。
試合内容で見れば、日本のチャンスの方が多かっただけに、最初の時間帯に自分たちで試合を壊してしまった悔いの残る一戦となりました。
3位決定戦
vsタイ
グループリーグでも戦ったタイと再戦!グループリーグの時と打って変わって、最初はお互いに守備が固く、なかなかスコアが動かない展開に…。それでも前半終了間際に先制すると、後半開始直後に追加点!
すると、また相手はパワープレーを開始!
1点返されるものの、日本が追加点!しかし、パワープレーを続けるタイにさらに1点を返されて、1点差のまま終了。
最後の最後まで責められていましたが、なんとか凌ぎ切って勝利!
僕が出場した日本男子は準決勝で敗れたものの、3位決定戦に勝利して史上初の銅メダルを獲得しました! 前回のスイスW杯ではグループリーグすら突破できず、10位という結果に終わったので、それを踏まえると大躍進だったのかなと思います。 4年間の積み重ねが結果として出て最低限のメダルが取れてホッとした部分がありつつも、やはり「世界一」をずっと目標にしていたので悔しさが残りました。
一方の日本女子は史上初の優勝!金メダルを獲得!
決勝を応援しにいきましたが、見応えがある白熱した試合でした。
男子の3位決定戦をメディアにも取り上げていただき、全国で放送されました!
デフスポーツならではの特徴ってなんだろう?
デフスポーツってどんな特徴があると思いますか?
正直に言うと、見てわかる特徴があまりありません。ルールは聞こえる人たちがやるスポーツと全く変わりません。違うのは、音が聞こえない代わりに視覚情報を使うだけです。これが、他のパラスポーツと大きく違うところだと思います。
しかし、ルールがほとんど変わらないということは聞こえる人も聞こえない人も一緒にプレーすることが容易ということにも置き換えられます。だからこそ、聞こえない代表選手たちが聞こえる世界に飛び込み、そこで交流し、プレーし、見てもらい、聞こえる世界でデフスポーツを広めていけるのではないかと思っています。
もちろん、聞こえない中でのコミュニケーションなど、デフスポーツならではの楽しみ方もあります。
けれども、デフスポーツだけで発信していくことには限界があると思っています。こうしたルールがほとんど変わらず自分で参加するハードルが低いというデフスポーツの強みを活かし、聞こえる人と聞こえない人が交わるような、スポーツを通じてインクルーシブな社会を作る道を切り拓いていくのは、デフスポーツしかないと自分は信じています。