キコニワから未来を生きるろう・難聴に送る、
ろう者・難聴者版の職業図鑑。
あなたの目指す働き方のヒントに。
さまざまな職種のろう、難聴者にインタビューを行い
職業紹介の記事を連載します。
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デフアスリート_卓球選手
亀澤 理穂さん
‐ 東京都出身
きこえについて
生まれつき耳が聞こえない。
ろう学校は小学校3年生まで通い、小学校4年生から地域の学校へ。
普段は補聴器を装用し、人に合わせてコミュニケーションをとる。
基本情報
卓球選手(パラアスリート雇用)
住友電設株式会社にパラアスリート社員として雇用される。社内広報の記事作成や交通費精算、スケジュール報告が主な業務内容。
日々トレーニングや練習があるため、限られた出社日数のなかで業務を遂行。
業務以外にも講演依頼やデフスポーツ普及関連のイベント派遣依頼があれば赴く。
デフリンピックの出場は計4回。
(2009年台湾、2013年ブルガリア、2017年サムスン、2022年ブラジル)
1日の流れ
卓球選手になるまでの流れ
<亀澤さんの場合>
小学1年生から卓球クラブに加入し、中学2年生で卓球名門校である中高一貫校に転校。
大学でも卓球を続け、新卒後は一般雇用で卓球を続ける。
より充実した練習環境を求め、パラアスリート雇用で住友電設株式会社へ転職。
デフリンピック初出場は18歳。(2009年台湾デフリンピック)
パラアスリート雇用で働き、卓球選手になるためには実績が必要!
トレーニングや練習を重ね、大会で好成績を残していくことが大切です。
求められるスキル、必要な知識
① 努力と忍耐力
スポーツ選手としては当然のこと。常に練習を積み重ねていくことが大切。
② 臨機応変に対応できる力
特に卓球のラバーは試合環境の湿度や気温の影響を大きく受けるため、試合中にそれに順応できる力が必要。
③ コミュニケーション力
卓球は個人競技のイメージが強いですが、ダブルスや団体戦もあります。
意見を言わなかったり、コミュニケーションを取らずにいると、チームワークが乱れ、良い成果を残せません。
こんな人が向いている!
デフリンピックや大会で優勝するなど、
目標を定めて突き進むことができる人
スキルアップのためにしていること
❏ 早寝早起き
「身体が資本!」生活リズムを整え、常に最良のパフォーマンスが発揮できる状態にする。
❏ 日々の積み重ね
トレーニングは最低でも週2で行う。
練習は最低でも1日2時間は行う。
❏ 動画研究
自分のプレーを撮影し、動画を見て研究。
❏ いろんな人との交流
コミュニケーションスキルを磨くことに繋がり、情報を得ることができる。
また、多様な価値観にふれあうことで、新たな視点を得ることができ、自分の考え方や行動に幅が生まれる。
教えて!センパイの経験談
この仕事を始めたきっかけ
卓球は親の影響
――卓球を始めたきっかけは?
実業団に入っていた両親の影響です。
小学1年生のとき、親に近くの体育館に連れられて初めてラケットを握りました。
最初は楽しむ程度で他にも、くもん、水泳、ママさんバレーに混ざってバレーボールなど習い事をたくさんしていました。
卓球を真剣に始めたのは中学2年生の時です。
初めて知った「デフリンピック」
――中学2年生で真剣に始めた理由は何でしょうか。
中学1年生のとき、日本ろうあ者卓球協会より声がかかり、合宿に参加しました。
そこで初めて「デフリンピック」の存在を知り、デフリンピックで金メダルを獲るという夢ができました。
その夢を叶えるため、中学2年生のとき公立から卓球名門校である中高一貫校に転校しました。 部活とクラブに通い、大学でも卓球を続けてきました。
引退してOLとして働くつもりだった
――大学卒業後も卓球を続けようと決めていましたか。
今は住友電設株式会社でパラアスリート雇用として働いていますが、以前は花王株式会社で一般雇用として働いていました。
新卒後のパラアスリート雇用を考えていなかった理由は、就職して半年後に迎える2013年のブルガリアデフリンピックを最後に引退をしようと決めていてその後はOLとして働いていくライフプランを思い描いていたのですが、なんだかんだ続けています(笑)
夢を諦めきれず…
――一般雇用からパラアスリート雇用へ変えた転職の決め手は何でしたか。
2017年のサムスンデフリンピックに出場した時、働きながら死ぬ気で練習したにもかかわらず金メダルを獲得できなかった悔しさと世界のレベルが上がってきていることを実感しました。
出産をしたこともあり、このまま一般雇用に加え育児をしながら夢を叶えるのは到底難しいと考え、 思い切ってパラアスリート雇用で働く転職を決めました。
ずっと働き続けたい企業でしたが、中学1年の時から持ち続けている夢を叶えたい気持ちが大きかったですね。
障害者アスリートの転職エージェントを利用
――パラアスリート雇用の企業はどのように探されましたか。
障害者アスリートを対象にした就職支援のエージェントがいくつかありますが、そのなかでも「つなひろワールド」を利用しました。
事前に会員登録をし、担当者と面談で希望の職種や働き方を伝え、数ある求人情報からマッチする企業を紹介いただく流れでした。
楽しい瞬間
辛いことが多い分、喜びもひとしお
――卓球をしていて楽しい瞬間はありますか?
正直、楽しいときよりも苦しいときの方が圧倒的に多いです。(笑)
二度、引退していますから。
それでも楽しい瞬間は、大会で優勝するのはもちろんですが、 課題をクリアしたうえで勝利を収めることや、納得のいく内容だったときは嬉しいです。
人から褒められたりすると、続けてきてよかったなと思います。
悩んだこと、悩んでいること
デフリンピックの知名度向上を!
――デフアスリートとしての悩みはありますか?
転職でとても悩みましたし、ママアスリートとして何が正解なのか日々悩んでいますが、今は特にデフリンピックの知名度があまりにも低いことですね。
東京デフリンピック2025の卓球会場は東京体育館行われる予定で、同会場で全日本卓球選手権大会が今年開催されました。
その大会に出場し、観客席が埋まるほどの人の多さに圧倒されました。
同会場で開催される東京デフリンピックで、空席が目立つようでは悲しいので、なるべく多くの人に観に来て欲しいです。
デフリンピックの知名度向上が重要になりますが、どのように知名度を上げていけばいいのか日々、模索中です。
きこえる人との協働の仕方
相互理解がポイント!
――きこえる人と働くときや、プレー中はどういった工夫をされていますか?
仕事では、Webミーティングのときに字幕機能がついたものを活用していただく等の配慮をお願いしています。
卓球では、コーチからのアドバイスのなかに、音に関するアドバイスをいただくときもあります。しかし、 音がそもそも聞き取れないため、デフ卓球の特徴を伝える必要があります。
そしてお互いに情報交換をすることで、新たな発見が生まれ、そこからデフ卓球に合うアドバイスをしていただけるようになったこともあります。
困ったときは相談
――中学校や高校のときはどうしていましたか?
悩んだことを先輩に共有し、同級生や後輩に伝えてくれたこともあったので、1人で悩まずに誰かを頼ってもいいんじゃないかなと思います。
「困ったら誰かに相談する。」すごく大切なことだと思います。 また、中学生のときは、親が先生やコーチに聞こえないことについて説明する必要があり、親の役目でもあると思うんです。
学生時代の印象的な出来事
何事にも挑戦していた学生時代
――13歳の頃の性格や印象に残っているできごとはありますか?
いろんなことにチャレンジしていました。
遊ぶときはとことん遊び、卓球になると真剣に練習するという、オンオフの切り替えが上手かったと思います。
先輩の姿にあこがれて
――オンオフの切り替えが上手かった理由はなぜでしょうか。
先輩の影響が大きかったと思います。
中高一貫校に通っていたので、中学生のときに高校生を見て育ちました。
卓球の練習が終われば即座に彼氏とデートしていたり、プリクラ撮っていたり、カラオケを楽しんでいたりする先輩がとても生き生きしていて輝いて見えました。
そんな風に自分もなりたいと思っていたら、自分まで切り替えが上手になってましたね。ずっとオンのままでは疲れますから。
学生時代にしておくべきこと
今を楽しもう!
――亀澤さんが思う、学生時代にしておくべきことは何でしょうか。
3つあります。
・興味のあることにチャレンジしたり、経験をする
・いろんな人と出会い、知識や情報を得る
・今の生活を楽しむ
3つ目について、中高で出会う人たちは卒業後簡単に会うことが難しくなります。今いる友人たちとの思い出をたくさん作ってください!
さいごに…
座右の銘
日ごろから心に留めている言葉を聞くことで
その人となりや、その人の歩んできた道が
垣間見えると思い、聞いてみました!
――最後に座右の銘を聞かせてください!
「笑う門には福来る」と「努力は裏切らない」の2つです。
――その言葉にはどんな意味が込められているのでしょうか?
「笑う門には福来る」は、事あるごとに母親からかけられていた言葉で、今でも言われることもあります。
どんなことがあっても笑っているとまわりも笑ってくれるし、幸せが降ってきます。実際に体感したことがあるからこそ、その言葉を大切にしています。
「努力は裏切らない」は努力せずに試合に勝つ者はいない。
努力した分だけ自分に返ってくる。なので、今、努力しています!(笑)
卓球選手になりたいあなたへ
私になれるかな…?と思っているあなたへ。
大丈夫。なれます!私もなれないと思っていました。でも、こうしてデフアスリート、ママアスリートとして活動しています。
最初から卓球が上手くなったり、強くなることはありません。
練習を積み重ねて、試合に勝ったり負けたりを繰り返すことで強くなっていきます。
みなさんも目標を作ってそれに向かって諦めずに頑張っていきましょう!