ろう・難聴版 職業ガイドブック_003 エンジニア 兼 ダイバーシティ推進担当


キコニワから未来を生きるろう・難聴者に送る、
ろう者・難聴者版の職業図鑑

あなたの目指す働き方のヒントに。

さまざまな職種のろう、難聴者にインタビューを行い
職業紹介の記事を連載します。

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目次

エンジニア 兼 ダイバーシティ推進担当

佐藤 真美さん

  ‐ 京都府出身

きこえについて

生まれつき耳がきこえない。
普段は手話・筆談の生活。
ろう学校幼稚部、小学校からは地域の学校へ。
小学校・中学校は難聴学級がある学校に通う。
補聴器は自分なりの考えがあり、20歳ごろから装用していない。

基本情報

エンジニア 兼 ダイバーシティ推進担当(会社員)

8割エンジニア、2割ダイバーシティ推進担当の仕事をしており、ほとんどの時間はエンジニアとして働く。

❏ エンジニア

社内でツール開発や改修を行う。一般的なイメージでいえば、「給与管理システム」や「在庫管理システム」などがある。

佐藤さんの場合、社員が業務で使用するアプリケーションを専用のプログラミング言語を用いて一から作成したり、改修したりなどのツール開発業務に取り組んでいる。

❏ ダイバーシティ推進担当

ダイバーシティの取り組みはさまざまであるが、佐藤さんの場合、社内で障害がある社員たちの働き方改善に繋がる提案をしたり、仕組み化したりすることに取り組んでいる。

ろう・難聴者が社内で聴者と円滑に働けるようにするためのコツをまとめた「ツナガル・ブック」を作成し、社内外への普及活動を行う。

佐藤さんが発行に携わった「ツナガル・ブック」についての記事です。あわせてお読みください!

 

1日の流れ

佐藤

自分のライフスタイルに合わせてリモートワークを活用しています。
必要に応じて、オフィスに出勤するときもあります。

 

 

エンジニア&ダイバーシティ推進担当になるまでの流れ

<佐藤さんの場合>

❏ エンジニア
新卒でプログラマーとして就職したが、一度退職。
他業種に転職するも、再びエンジニアとして働きたい気持ちが強まり復帰。
離職していた期間を除いて9年間エンジニアとして勤務。

❏ ダイバーシティ推進担当
現在の会社に入社後、ダイバーシティ担当部署から声がかかる。
「当事者として、ダイバーシティの会議に参加し、要望や意見を出してほしい」
この依頼を受けて会議に参加し、さまざまな提案を行うようになり、ダイバーシティも兼任するようになる。

佐藤

今までのエンジニアとしての経験を活かして会社に貢献したくて入社しました。
その後ダイバーシティ担当部署から声がかかったことがきっかけで、ろう者・難聴者も働きやすい環境、実力を発揮できる環境づくりをしたくて、ダイバーシティ推進担当も引き受けることにしました。

 

求められるスキル、必要な知識

❏ エンジニア
「システム開発 ~ 計画 ~ 設計 ~ 運用 ~ 保守」を担当し、ゲームアプリ開発など多岐にわたる分野で活躍する。
業務は3つに大別でき、それぞれに異なるスキルが求められる。

  • 顧客対応&設計
    顧客からの要望を聞いて設計し、コーディング担当者に依頼する。
    コーティング担当者が仕上げたアプリを顧客に使ってもらい、バグがないか確認してもらう。
    顧客・コーティング担当者の双方との連絡を担うこともある。
  • コーディング(コードを書くスキル)
    設計をコーディングし、顧客の要望を形にしていく。
    また、運用・保守(テストや完成後の動作確認、バグ対応等)を行うこともある。
  • 顧客対応&コーディング
    自分で顧客対応とコーディングを一通り行う。

 

必要なスキル① プログラミング言語
数多くのプログラミング言語が存在するが、何でもいいので1つプログラミング言語を究めると良い。
1つ究めると、ほかのプログラミング言語も習得しやすく、応用が利くため。

必要なスキル② コミュニケーション力・文章力
相手に自分の伝えたいことを確実に伝えるための力
相手の要望を正しく汲み取り、形にする力

 

❏ ダイバーシティ推進担当
必要なスキル① 経験
スキルよりも公私とともに多岐にわたる業種の人と関わる経験や、これまでにやったことのない体験をすることが大切。
そして、自分がこれまでどのような経験を重ねてきたか、そしてその経験に対して自分がどう考えているかが重要。

必要なスキル② 多様性を受容する力
いろいろな立場の人の意見を聞くことで、いろいろな立場の考え方や価値観があることを認識していく力。

佐藤

「多様性を受容する力」と言葉で言うのは簡単ですが、意外とできていない人が多いと感じています。対話ができるかどうかが重要で、そのためには自分がいつも正しいと思わないことが大切です。

 

こんな人が向いている!

❏ エンジニア

コミュニケーション・文章での伝達が得意な人
相手のニーズや要望に対して応えたり、相手の要望を形にするために自分から提案することができるかどうか。

集中力と根気がある人
1000行のコードからたった1つの間違いを探すこともあるため、途方もない時間と根気が必要。

一生勉強する覚悟がある人
IT技術の進化は凄まじく、身につけた知識だけではやっていけないこともある。
顧客からの要求もどんどん変化するため、常に勉強が必要。

❏ ダイバーシティ推進担当
  特に障害関連のダイバーシティ推進担当として自身の経験を活かした業務をする場合
 
障害の困りごとや感情を言語化し、発信や提案することができる人
障害に対する理解や直面する社会・職場環境での課題や不便さを周囲に伝わる言葉に変えていける力。
また、なにが必要かを考え、企画として形にして提案していく力が必要。

フラットな目線で周囲の声を拾い集め、冷静に判断して動いていける人
独りよがりになることなく、周囲に何が必要か、きこえない人は何を求めているのかを
冷静に考えて全体を俯瞰していく力が必要。

精神的にタフであり、人を巻き込む力のある人
どこでもそうですが、特に障害に関することは相手からの何気ない言葉が差別や偏見のように感じることもある。
それに対して筋道が通った説明ができる人。
業務は一人だけではできないため、ほかの人を「一緒に変えていこう!」と巻き込んで進めていける力が必要。

  

スキルアップのためにしていること

❏ エンジニア
自分が楽しめる範囲内で簡単なツールを作っています。
また、「AtCoder」という競技プログラミングに挑戦するべく、基本のアルゴリズムを復習したり、
情報系の資格取得に向けてひたすら勉強しています。
以下の本がオススメです。

❏ ダイバーシティ推進担当
ダイバーシティ関連の本を読み、基本的な知識を身につけています。以下の本がオススメです。

教えて!センパイの経験談

この仕事を始めたきっかけ

パソコンを使う仕事ならなんでもよかった

――エンジニアになろうと思った経緯を教えてください。

佐藤

大学生の頃、パソコンと出会った時に初めてチャットの存在を知りました。その時、聴者とスピーディーな会話ができたことに驚きました。

高校までは筆談が多く、3人以上のグループでの会話についていけないなどの問題がありましたが、チャットはその問題を解決してくれました。
また、チャットだと複数人の会話が文字で見えるので、冗談やボケ・ツッコミのやり取りも「こういう時にこういう冗談を言えばいいのか」「こういうボケにはこうツッコんだらいいのか」など、
今までの人生の中で知ることがなかった会話を文字を通して知ることができたことにとても感動しました。

そこからパソコンの自作をするほどハマりました。
そして、「パソコンを使う仕事なら聴者と対等に仕事ができるのではないか」と考え、パソコン関連の業務ができる会社を何社か受けました。その中で一番先に受かったのがプログラミング関連の仕事でした。

当時プログラミングの知識が全くなく、「プログラミングとは?」という状態だったのにです(笑)

 

一度は離れたエンジニアの仕事だが、きこえないことを強みにするべく復帰

――プログラミングの知識がない状態でもやっていけたのでしょうか。

佐藤

大学や専門学校で学んでからエンジニアになる方もいますが、私の場合は新卒後メーカーの情報システム部門に勤めながら勉強して習得しました。参考書を読んだり、実際に使用しているツールのプログラムを解読したりなど勉強の日々で大変でしたが、重ねていくうちにプログラミングの面白さを知りました。

その後、他の業種を経験したい気持ちが出てきたので一旦エンジニアから離れ、異なる業種へと何回か転職し、幅広い経験を積みました。

このように色々とありましたが、やはりエンジニアとして耳がきこえないことを強みにしたアプリを開発したい気持ちが強くなり、再び働くことを決めました。前職で3年、そして現在は今の会社に入社し、エンジニアとして9年になります。

 

転職の経験がダイバーシティの仕事に繋がった

――ダイバーシティ推進担当になろうと思った経緯を教えてください。

佐藤

最初はダイバーシティの仕事をすることは考えていませんでした。

エンジニアとして今の会社に入社後、ダイバーシティ部門から「当事者としてダイバーシティの会議に参加し、要望や意見を出してほしい」と依頼され、その会議に参加したのがきっかけです。

これまでの会社でもコミュニケーションの課題などの働きにくさを感じていたことがありました。また、今までさまざまな会社できこえない人として働く中で悩んだこと、考えたことなどを活かしたいと考えていたこともあり、まずは今の会社でろう者・難聴者が働きやすい環境づくりに努めることで、ほかの社員にとっても働きやすい環境につながるのではないかと思っていたことから、ダイバーシティも兼任することにしました。

仕事の面白さ

エンジニアには「当事者問題を解決していく力」がある

――仕事をしていて楽しいと思う瞬間はありますか?

佐藤

エンジニアは私にとって、当事者問題を解決することができる人だと考えています。

ここでいう当事者とは、ろう者や難聴者に限らず、社会に対する壁を感じていて問題を解決したい人のことを当事者としています。
社会で起こっているあらゆる問題の中で解決したいものがあれば、エンジニアの力で解決に繋げていける。それがエンジニアの楽しさです。

例えば、ろう者・難聴者が社内でパワーポイントを使いながら音声で発表するのが難しい問題に対して社内でパワーポイントで発表を行うときのための音声読み上げ機能がついたものを開発し、社内で発表がある時はそのツールを使って資料を作成し、自動で読み上げさせながら発表することができています。また、それを社内で働くほかのろう・難聴者にも配布し社内で活用していただけるようになりました。

このように、きこえない人として生まれたということは、社会の課題が見えるということだと思っています。

そして、社会の課題を発見し、エンジニアとして問題解決していくことができる。それがきこえない人の強みだと思っています。

言いかえれば「きこえない」ということはあなたの宝物とも言えるのです。
聴者には見えない社会の課題が見えるということなのですから。

 

きこえない自分は聴者よりも、社会の課題にたくさん気づくことができる

――ダイバーシティ推進担当の方はいかがでしょうか。

佐藤

基本は同じで、社会の問題を解決していく。そこはエンジニアと共通しています。ダイバーシティは自分の経験を一番活かせる場所だと思います。

きこえない自分は聴者よりも、社会の課題をたくさん見ることができる。気づきを活かし、要望を出すことができる。そこが一番の魅力かなと思っています。

 

悩んだこと、悩んでいること

勉強する時間がもっとほしい!

――エンジニアの場合は9年間、ダイバーシティは2年間での悩みはありましたか?

佐藤

うーーーん…悩みかぁ。いーっぱいあります!(笑)
エンジニアとしての悩みというと、とにかく勉強する時間が欲しいです。
技術の進歩が著しいので、ついていくのに必死です。

チャットツールの利用により顧客とのコミュニケーションが比較的スムーズになりましたが、壁はまだまだあります。
例えば、他のろう者エンジニアの場合、顧客の障害への理解不足から「きこえない人に何ができるのか?仕事は任せられない」と判断されたことがあり、それで悩んでいると聞きました。
このような話を聞くたびに、自分の実績を示す必要性を感じています。実績づくりに必要な知識を身につけるべく、日々勉強に励んでいます。

ダイバーシティの面では、博識な方は本をたくさん読まれているので、自分も見習ってダイバーシティに関する本をたくさん読み、さまざまな立場の方々と多く触れ合うことで知見を深めていかねばと思っています。
そのための本を読む時間も欲しいところです。

 

きこえる人との協働の仕方

できること・できないことを伝えられる力を身につけよう

――きこえる人と働かれていると思いますが、どういった工夫をされていますか?

佐藤

自分ができること、できないことをはっきり説明するようにしています。
ただ、やみくもにできないと言ってばかりでは相手も意欲を失い信頼関係に影響を及ぼすので「これはできないけれど、この方法であればできます」という言い方で代替案も提示するようにしています。

そして、相手にできないけれど自分にはできることがあるかもしれないので、そういう時は「私がやりましょうか?」と聞いてみるなど、協力し合おうという姿勢が大事だと思います。

待っているだけでは何も得られません。自分から声をかけるなど行動を起こして、積極的に関係づくりをしていくことが大切です。そうしていくと、困ったときに相談しやすくなったり、助けを求めやすくなります。

意外ときこえる・きこえない関係なく、それができない方が多いのではと感じています。仕事だから仕事の話だけと考えずに、相手の反応を見て、話しかけたり、話しかけるのを控えたりして空気を和らげたりすることも時には大切なことだと思います。

「ツナガル・ブック」をぜひ活用してほしい

――そこで「ツナガル・ブック」を活用していただけるといいですね。

佐藤

聴者とろう・難聴者はコミュニケーションの面ですれ違いが生じやすいので、相手と話していて何か引っかかることや嫌な気分になったことがあったとしても、「これはどういう意味でしょうか?」と話しかけてみることも大事だと思います。

聞いてみれば意外と大したことなかったり、色々と考えてくださったりすることもあります。また誤解だったとしても早めに話して問題の芽を早く摘んでおくのも今後のコミュニケーションを円滑にするコツだと思います。

しかし、それができる人ばかりではありません。自分から話しかけられない人もいます。また、逆に聴者も「これを聞いたら差別になるのでは」と思い、ろう・難聴者に対して関係づくりを遠慮してしまったりする人もいます。
そういう時はツナガル・ブックをお渡しして読んでいただくのも1つの方法かと思います。

いつか自分が社会に出た時に活用してみてくださいね!

学生時代の印象的な出来事

「筆談」を教えてくれた先生

――学生時代の性格や印象に残っているできごとはありますか?

佐藤

内向的でおとなしい性格でした。聴者に囲まれて周囲の話が分からないまま、また自分の話も思うように通じないまま生活していたからというのもあると思います。

小4のある日のこと。当時は5教科を難聴学級、それ以外をきこえる子だけのクラスで行っており、その時に在籍していたクラスでは毎月、その月の誕生日の同級生を祝う会が開かれていました。ある月の誕生会の司会者を決める時、先生から「司会をやってみないか」と指名を受けたのですが、口話ができないことを理由に最初は断りました。それでも先生は指名してきましたが、口話もできないのにどうやって司会をしたらいいんだ。と頑なに断り続けました。

その日は司会が決まらず、先生から「他にも方法はあるんじゃないかな。考えてみなさい。」と宿題を出され、下校してからも家でずっと考えていました。筆談すら知らない私は何も思いつかないまま翌日を迎え、先生に「分からない」と言うと、「文字で紙や黒板に書いて伝える方法があるんじゃない?1回やってみてはどうかな?」と筆談の方法を提案してくれました

佐藤

しかし、当時の私は文字を書いて伝えるというのは “負け” な気がしていました。

生後しばらくしてからきこえないということが分かり、その時からろう学校で口話の訓練を受け、周囲からも「聴者のように聞いて話すことが素晴らしい、聴者みたいにならないと生きていけない」とずっと教えられ、自分もそれが正しいと思い込んでひたすら頑張ってきたため、声を出すのをやめて筆談で伝える方法は自分に対して負けた気がして嫌でした。
腑に落ちませんでしたが、その方法で司会を受けることになりました。

そして当日の誕生会では、発言内容を全て黒板に書いたり、指差ししながら司会を務めました。誕生日を祝う会終了後、先生から 「よくやった。そういう方法でもいいんだよ。」とほめていただきました。

その後も文字で伝えることには抵抗がありましたが、時折この出来事を思い出し、自分の生き方や考え方について考え続けていました。

これが1つ目の人生のターニングポイント(転機)でもありますね。

大学時代に出会った、障害者観をアップデートしてくれた先輩

――2つ目のターニングポイントは何でしょうか。

佐藤

大学1年のとき、とあるろうの先輩から「君はいつも自分のことを障害者だと思い込んでいるね。」と言われたことです。
私はいつも「どうせきこえないから」や「だってきこえないから仕方ない」と、きこえないことを理由にして、いつも何かを諦めるような言い方ばかりしていました。それを見かねた先輩がその言葉を言ってきました。

最初はその言葉の真意が分からずにいましたが、「ろう学生懇談会」でろう者の友人が増え、手話で話す楽しさや喜びを知り、また、社会問題を知り、自分の気持ちを言語化できるようになったことで、自然とその言葉の意味が理解できるようになりました。

これまでの自分は「障害がある」ということをマイナスに捉え、「きこえない自分」を自分で受け入れることができていなかったのです。
それが「どうせきこえないから」「障害があるから」という言葉に結びついていたのだと思います。つまり、私は悪い意味で自分のことを障害者だと思っていた、そういうところに先輩は気づき、その言葉を言ってきたのだと今は思ってます。

また、自分が1人なら障害だと思わないところに、社会の大多数がきこえる人だからバリアを感じるのであって、自分にだけ問題があるのではなく、社会構造に問題があるという意味であることに気づくことができました。

そこから「聴者に憧れていて聴者になりたかった自分」を捨て、きこえない自分を受け入れ、堂々ときこえない自分として生きていくことを考えるようになりました。

このタイミングが2つ目のターニングポイントです。

学生時代にしておくべきこと

まずはScratchというアプリでエンジニアの世界を体験しよう

――エンジニアになるために学生からでもできることは何でしょうか。

佐藤

エンジニアは終わりのない勉強が必要な仕事です。常に新たな知識を習得するために自分から動いていこうという自主性がとても大切です。

また、新しいことに挑戦していく気持ちも大事だなと感じています。私は20代のとき全都道府県すべて回りました。
自分から新しい環境に飛び込んだり、いろんなものを見ようとする気持ちがエンジニアの基本なのかなと私は思います。

そして、なにを開発したいのか考えてみて、なんでもいいのでなにか1つでも形にするといいと思います。
Scratch(スクラッチ)というプログラミングのゲームがあるので、それでなにか1つ作ってみることから始めてみるといいのかなと思います。すると、エンジニアがどういう仕事なのか見えてくると思います。

プログラミングには、アプリをつくるために必要なプログラミング言語がたくさんあるので、何が自分に合うかを探していくのも楽しいと思います。

 

ろう者や難聴者に限らず、育ってきた環境が異なる人と交流しよう

――ダイバーシティ推進担当の仕事をするために学生時代にしておくべきことは何でしょうか。

佐藤

ダイバーシティは社会の問題解決ともいえます。社会にはろう者もいれば難聴者もいます。ろう者として、ろう者の問題解決に目を向けながら、世の中には難聴者もいることを考慮し、 相手に説明していく気持ちがこの仕事では大切です。

「手話が必要な人もいれば、文字の方がいいという人もいるよ。」と自分とは違う立場の人を考えようとする気持ちが大切になってきます。

大人になって新しい価値観を持つのは苦労すると思うので、学生のうちからさまざまな立場の人と交流していくといいと思います。

経験の積み重ねが糧となり、広い視野で判断し、フラットな立場で俯瞰ができるようになるかもしれません。

 

エンジニアとダイバーシティ推進担当の共通点

佐藤

エンジニアもダイバーシティもどちらも社会を変えることができる仕事だと思っています。

そして、どちらもきこえないということが強みになります。
もしあなたが、「ろう・難聴として生まれたことが自分は嫌なことか、よかったことと思っているか?」と聞かれた時、

嫌なことだと思っているのならば、なぜ嫌だと思うのかを考え、どうしたらその「嫌なこと」を良い方向に変えていけるのか?を考える。
よかったことと思っているのならば、なぜ良かったと思っているのか、言語化してその考えをみんなに広めていけばいい。

きこえないということは考えようによってはどう転んでも常にプラスになるし、それをうまく使いながら社会を変えていくことができるのです。

さいごに…

座右の銘

日ごろから心に留めている言葉を聞くことで
その人となりや、その人の歩んできた道が
垣間見えると思い、聞いてみました!

おもしろきこともなき世を
おもしろく

Going my way

――最後に座右の銘を聞かせてください!

佐藤

「おもしろきこともなき世をおもしろく」と「Going my way」の2つです。

――「おもしろきこともなき世をおもしろく」にはどんな意味が込められているのでしょうか?

佐藤

私がモットーにしていることで、「何かあっても必ず前向きに考える、変えていく」ということ。どんな辛いことや困難があったとしても必ず道はある、解決方法が必ずあると思っています。

そして、何か嫌なことや壁にぶつかった時でも、「どんな時も常に何か必ず未来を切り拓く道があるはずだ」と信じて、「きこえないから出来ないではない。きこえなくてもできるようにするには何をどうすればいいか?を考える」ことを常に意識して動いていく。
待つだけではない。自分が作る。常に自分が作っていくという気持ちを持ち、不満があるのなら、それは社会を変えるチャンスだと思って行動する。

つまり、「常に改革していく気持ちを持つ」ことがきこえない人生を面白くしていくのだと思っています。

――前向きになれる言葉ですね!もう1つの「Going my way」はどういったものでしょうか。

佐藤

直訳は「我が道を行く」という意味になり、そこだけ見たらカッコいいと思う反面、人の意見を聞かず、自分の意思を貫き通すというマイナスイメージもあり自分勝手とも捉えられてしまう場合もあります。

しかし私はそういう意味ではなく、あくまでも自分のことは自分で責任をとるということだと考えています。
時には親や先生に助言を受けることもあるでしょう。それらは大切な意見でもありますので、その助言を聞いたうえで、その中から自分でこうしたいと決め、 自分が下した決断に自分で責任をとる。そのうえで自分の道を行くというのが 私なりの“Going my way” だと思っています。

 

エンジニアになりたいあなたへ

プログラミングの勉強は時間がかかる。 「3ヶ月で身につく!」というフレーズに騙されないように。

そしてなるべく若いうちにたくさん勉強して資格も取っておくこと。 歳をとってから勉強しても、その頃は仕事や家事、育児介護に追われて時間が取れず、苦しい思いをすることがある。また、顧客との関係づくりがうまくいかない等さまざまな理由で脱落するきこえないエンジニアは多い。

でも本来は、何かを作り上げてお客さんに喜んでもらうことがエンジニアとしての喜びなので、それを味わうためにもぜひ若い頃からできるだけ勉強して、開発の楽しさ、ツールを作る楽しさを経験してほしい。
また、顧客との会話を通して良いものを作ることができるエンジニアになるためにも、若いうちからさまざまな方々との会話を通してコミュニケーション力をつけていくことを大切にしてほしい。

また、早いうちに1つの言語を深く身につければ、それが基礎となって別の言語にも応用が効くようになるのでぜひお勧めしたい。

佐藤

佐藤さんは「デフエンジニアの会」の代表を務めていらっしゃいます! こちらの記事もあわせてご覧ください!

中高生へのメッセージ(手話動画)

 

参考リンク

「エンジニア」「ダイバーシティ」に関連する本





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この記事を書いた人

ひとり旅をこよなく愛するアラサー。
「面白そうな情報ゲット!」「視野が少し広がった」
そんな、読んだらちょこっとウキウキするような記事を
お届けできたらと思っています。

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