「聴こえないのに音楽聞くの?」に1万回ぐらい頷いた日

「聴こえないのに音楽聞くの?に一万回ぐらい頷いた日」タイトルの周りには音楽を表す楽器、ライブに行く人、音を振動で伝えるデバイス、カラオケに行く様子の人が描かれている

「えっ?聴こえないのに音楽好きなの?」

わりと聞かれるこの質問!🥺
でもその質問のたびに、めちゃくちゃ頷きます。盛りに盛って1万回ぐらい。
私は音楽に詳しいわけじゃないけども、「まあ、音楽好きだよ」って頷いて言います。

「音楽=耳で聴くことが全て」って思っている人がほとんどなんですよね。大多数。
だから、「聴こえない=音楽を楽しめない」って、すぐに思い込みがち。

でも…本当にそうでしょうか?

実は最近…「音楽は耳で聴くだけじゃない」ことを体験できる、ある機能が登場しました。
あのAppleさんが音楽を“振動で感じる”設定機能をiPhoneに搭載したんです

その名も…
「Music Haptics」!!
(ミュージックの触覚)

アクセシビリティ設定からオンにすると、
iPhoneが音楽のリズムに合わせて振動するとのこと!(※iOS18以降)

iPhoneのApple Musicにサブスク課金していたので早速試してみました。
「ほんとに音楽に合わせて振動してくれるのか~!?」と、期待に胸がふくらむ中、
実際にEDM系の曲を流すと…
(ブンッ、ブッ、ブッ)と手に振動が伝わってきました。リズミカルな振動だ…!

そしてQUEEN「We Will Rock You」流してみると…
あの特徴的なリズム”ドンドンパンッ、ドンドンパンッ”に合わせてiPhoneが震えました!
参考:Queen – We Will Rock You (Official Video)

ドンドンパンッ♪(ブンブン ブンッ♪) ドンドンパンッ♪(ブンブン ブンッ♪)

「おっ!おっ!リズムなんとなく感じるぅ〜!!」とテンション爆上がり。

が―――

……10分後、私は気づいた。

手がしびれる。

ゲームコントローラーの振動とかの、振動し続けているのをずっと握ってるとじんわ~りと手がしびれてくるあの感覚。

もしかすると…これは長時間の利用は適さないかもしれない―――

と、休憩しながら音楽を聞き、振動を感じ取ってみて数時間。


ううん…リズムの振動は確かに伝わってくるけれど、音の高さやメロディまでは細かく感じ取れずわかりづらい。

「ブン!!ブブブン!ブウン!」と振動で盛り上がってるのがメロディなのか分からない。
面白いけれど、細かい部分が読み取れない…この感覚は言うなれば、カレーの匂いを嗅いで中に入っている具材を当てるみたいな感じ。
細かいニュアンスをもっと感じ取りたい人にとっては物足りなく感じてしまうかも。

でも試してみる価値はおおいにアリ!
という訳で、設定の方法はコチラ。

  1. 「設定」  >「アクセシビリティ」>「ミュージックの触覚」を選択。
  2. 「ミュージックの触覚」オン
真ん中に「ミュージックの触覚」が現れます!
※ただしiPhoneにデフォルトで入っている「ミュージック」アプリ(Apple Music)のみ対応。 

この機能は、2024年春に実装されたためiOS18以降から対応されています。
Apple Musicに加入してる方はぜひ、iOSアップデートして試してみてくださいね!

ちなみにこのアプリはリアルタイムで歌詞も出してくれるのでおススメです(対応曲のみ)

米津玄師のLemonの歌詞がリアルタイムで出てくる様子

未来のAppleさんには、脳みそに直で音楽が流れ込む超触覚デバイスをいつか開発してほしいですね!(他力本願)



さて、「聞こえない人ってどうやって音楽を楽しんでるの?」って話についてですが、
今回の記事は、“耳で聴くだけじゃない音楽体験”の例をどんどん紹介してみたいと思います~~!

目次

耳が聞こえない人は音楽をどう捉える?

まず、聴覚障害のある人が音楽を楽しむとき耳からの「聴覚」だけに限らず、

①音の振動を手や身体で感じる(触覚)
②MVやPV、リズム、ダンスなどを楽しむ(視覚、体感覚)
③文字で表される歌詞を読み、音楽の世界観を味わう(視覚)


…などといったように、聴覚だけでなく“別の五感”で音楽を楽しむことが代表的なスタイルです。

①音の振動を手や身体で感じる(触覚)

①の触覚については、先ほどのiPhoneの振動機能のような楽しみ方です!

過去、2019年に振動で音楽を楽しむイベント「耳で聴かない音楽会」が開催されたこともあります!

この音楽会では「振動から音を感じる」触覚からのアプローチで「Ontenna」や「SOUND HUG」といった振動体験デバイスが活用されてました。iPhoneの振動機能同様にもっと発展していってほしい技術ですね!
音楽会についても個人的にレポ書いてますので興味がある方はぜひ。

「耳で聴かない音楽会」聴覚障害者視点レポ

②MVやPV、リズム、ダンスなどを楽しむ(視覚、体感覚)

ちなみに私自身、3人組テクノ系アイドルユニット「Perfume」のライブに時々通っているのですが、
中でも好きなのは、3人のダンスパフォーマンスや、ライブならではの光輝く華やかなレーザー演出!
特に「踊る姿」を見られるからこそ楽しいし、音以外の魅力に惹かれている部分も大きいんですよね。

Perfumeは本当に”視覚”で”魅”せてくれる!

また、見るものは踊りや光だけでなく、リズムも”見る”ことができます。

見て楽しむ映像の音楽

リズムを視覚化した映像演出としては、ビートが光切り替えやアニメーションになってたり、音楽の切り替えタイミングで映像が変遷したり、音が可視化されてゆく演出などもあります。
これらはある意味「見て味わう音楽」とも言え、音が聞こえなくても歌の世界観が感じ取れます。
以下の動画のようにビートが映像演出で分かりやすくなっているものも…!
参考:Perfume “FUSION”&”edge” from Reframe Tour 2021

この歌は同じ歌詞を繰り返すのが多く、比較的ダンスと映像に集中して観やすい作品。
(もちろん歌詞字幕を観る選択肢もあってほしいですが…!)

身体で感じる音楽

コンサートやライブでは 「音圧」を体の感覚で感じ取れることの他に、推しに会えることの特別感や、演出によるライヴ感の雰囲気も魅力のひとつ!
ちなみにコンサートやライブ会場など音が大きすぎる場所だと、補聴器が上手く機能しなくなったりするのですが…(大音量過ぎて補聴器のキャパシティ超えてしまうため)
そんな時には事前の歌詞暗記だけでなく、ダンスのタイミングや光の演出、推しの口の動き、手足の動きなどを覚えておいて、どのパートか把握する工夫を行ってる人もいます。もちろん、覚えずになんとなくノリで楽しむスタイルの人もいます!

そして、重低音の振動を空気や床・壁から感じ取るのは、ろう学校でもよく活用されています。定番なのは太鼓。特に体育祭などでは踊る種目もあったのでタイミング合わせとして、よく太鼓が使われていました!

太鼓は昭和時代から多くのろう学校で親しまれてきた楽器

踊って楽しむ音楽

ダンスや身体表現は、「動いて楽しむ」音楽のかたちでもあります。
ろう者の中には、リズムを感じ取り、ダンスや動きで音楽を楽しむ人も。「リズム=体で刻むもの」という発想から、聴くことよりも体で動くことで音楽に近づくスタイルの人もいます。

ちなみに、徳島県では阿波踊りを楽しむろう者も多いそうで、ここでも太鼓の音を基にしてリズム感覚を体に染みこませ覚えていくそうです。

なお、今年11月開催の「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」では、ろう者による阿波踊りのプログラムも予定されているとのこと!興味のある方はぜひ観に行ってみてくださいね。

③文字で表される歌詞で、音楽の世界観を味わう(視覚)

冒頭で紹介したよく聞かれる質問
「聴こえないのに音楽が好きなの?」に
次いでよく聞かれるのがこの質問。
「聞こえない人ってカラオケ行くの?」

これが③の「歌詞を楽しむ」ことに関係します!
もちろん聞こえない友人含め、平成時代を生きてきた私もカラオケによく行ってました。

なぜなら…歌詞の字幕が出て来るから。

参考例:Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」 MAD カラオケ歌詞動画(ニコカラ)

こんな風に文字が現れるカラオケ歌詞

歌の歌詞とリズムを知りたい──そんな当たり前ことであれど、とても大事なこと。
その中でカラオケは歌詞とリズムを知る手段のひとつなのでした!
曲に合わせて文字の色も変わるので、今どの部分が流れているのかも把握しやすい。

採点に加え字幕も流れてくる万能カラオケ画面

昔はCDに付いてくる歌詞カードやブックレットを見ない限りは歌詞がわからない時代もありました。
映像で歌手の口の動きを見ながら、必死に歌詞カードとにらめっこしていた頃も…。

こんな感じのブックレット歌詞カード

今はネット検索ですぐに歌詞が見れるようになって便利な時代になりましたね~!
最近の音楽番組も歌詞が表示されることが増えてきましたが、番組によっては歌詞が出なかったり…。
ライブDVDやCD、音楽配信などで歌詞字幕がつかないというのは今もよくある問題です。

ちなみに、聴覚障害者同士でカラオケ行くときは、「上手く歌うこと」がメインではないことも。
上手い・下手があまり分からないからこそ、なんとなく声を出して歌ってみたり、好きな推しが映ってる映像を流してみたりと、それぞれ自由にカラオケを楽しむことが多かったです!

そしてそんなカラオケで歌詞を知る時代から、少しずつ時代は変わってきました───

動画の字幕職人、マジ神。歌詞字幕がもたらした「読む音楽」の楽しみ

歌詞を読むことも、音楽を楽しむ方法のひとつ。

2006年にサービスが始まった「 ニコニコ動画」は、特に歌詞字幕付きMVの普及に大きな影響と転機を与えました。
合成音声ソフトウェア「ボーカロイド」を使った楽曲作品の増加に伴い、ボーカロイド独特の人工的でやや聞き取りづらい歌声でも歌詞がわかるようにと、この頃は字幕付きのMV動画が多く投稿されるようになりました。

参考資料:「メルト」(2007) 

さらに、このニコニコ動画特有の「流れるコメント」機能によって、
視聴者の反応が可視化され、“体感”する面白さも広がりました!
その中でも特に「字幕職人」と呼ばれるユーザーたちが、歌詞をコメント字幕で作成してくれることがあり、当時はその存在に助けられていた思い出があります。
また、ニコニコ動画内でカラオケを楽しめるよう、カラオケ字幕風の動画投稿が増えた「ニコカラ」の文化も出て来たり…。これも地味に嬉しかったですね~!

参考:【ニコカラ】千本桜 (off vocal) (2011)

こうした流れを受けて、
ボカロやアニソン文化を筆頭に 文字を用いた演出=“文字PV”(キネティック・タイポグラフィ) がどんどん増加。
MVの中に歌詞の文字がビジュアルとしてデザインが組み込まれるようになり、
“読む音楽”が分かりやすさと共に楽しみ方も本格化していきました。

参考資料:ハチ マトリョシカ(2010)

シンプルな歌詞字幕ではなく、文字演出としてのポップな歌詞表現。

令和を代表する存在とも言える Ado のMVにも、その”読む音楽”の一例がみられます。

参考資料:Ado うっせぇわ(2022)

明朝体フォントを用いたスタイリッシュな
歌詞演出が多くなってお洒落に。

ただMV動画の多くはまだまだYouTube上の日本語クローズドキャプション(CC字幕)が設定されてないことも。(上記2つの動画も日本語CC字幕が設定されてませんでした)

だからこそ、動画内に文字が入ってないMV動画で、
Youtubeの自動生成字幕ではない、タイミングも手動のCC字幕設定を見かけると、
「おっ…ちゃんとしてるな…」と感心しちゃう。
参考資料:米津玄師 BOW AND ARROW(2025) ※CC字幕をONにしてみて下さい

※0:27辺りから
こんな手動CCが当たり前になって欲しい…
(ただし同アーティストでも動画によってはCC設定されてたりされてなかったり…米津玄師「lemon」MVには日本語字幕設定されておらず🥺)

更に!Vtuber界隈ではYoutubeのCC機能を応用し、
まるでカラオケ字幕のような演出が施されたCC字幕が組み込まれるMV動画も登場!

参考資料: 星街すいせい ビビデバ (2024) ※CC字幕をONにしてみて下さい

多言語対応のためCCを英語・韓国語・中国語にすると、画面上下にCCがちゃんと出て来る…!
(ほんとにすごい技術なので普及されてほしい)

今や「音楽=聴くもの」ものだけでなく
「読む音楽」としても楽しむ時代。
歌詞字幕の演出が増えていくことで、誰でも音楽を楽しめるように娯楽の幅が広くなっていると感じています!

【まとめ】

後半はややマニアックになってしまいましたが…。

音楽は耳だけのものじゃなく、他の五感でも楽しめるもの。
音楽の感じ方は人それぞれで、ひとつの形じゃない。

聴こえないからこそ、別の感覚を使って音楽を感じ取ることで、感性が豊かになることもあります。
音、光、振動、映像、歌詞字幕、視覚、身体―――完璧に聴こえなくても、工夫次第で「音楽は心と体で感じるもの」だと声を大にして言いたい!

iPhoneの振動で音を感じ取る機能は面白いとは思ったものの、まだまだ発展途上。
でも、このような技術が普及することで、新しい技術や音楽の捉え方が変わっていくかもしれません。
ニコニコ動画のボカロ文化によって、文字に力を入れた動画がどんどん増えたのと同じように
振動を使った音楽表現も、いつかの未来で可能性がたくさん生まれてくることもありそう。 
私はそんな未来にほんのり期待を寄せています。

音楽の楽しみ方は人それぞれで十人十色。
ぜひ、これからもあなたなりの音楽の“感じ方”を探してみてくださいね!

「聴こえないのに音楽が好きなの?」と聞かれたらもう一度、頷きます。

音楽の楽しみ方はめちゃくちゃ幅広いぞ~~~~!!!!と。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

楽天市場およびAmazonのアソシエイトとして、当サイトは適格販売により収入を得ています。

「聴こえないのに音楽聞くの?に一万回ぐらい頷いた日」タイトルの周りには音楽を表す楽器、ライブに行く人、音を振動で伝えるデバイス、カラオケに行く様子の人が描かれている

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この記事を書いた人

<あしゅらん / Asyuran >
ライター/デジタルクリエイター
デフファミリー生まれ
アウトドアなインドア。
アウトドア系話題からインドア系話題までゆるく発信します。
1週間半世界一周したりフッ軽フッ重になったり
趣味で映像作ったり漫画描いたりしてるただの事務職社会人です。

【近況】最近〆切に追われて呻いてたら友人から「〆切本」を頂きました。

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