権利を行動に──当事者がつくる暮らしやすさ

上のタイトル「『障害者権利条約』とは?」。真ん中には拍手しているイラスト。左横の吹き出しには「障害者の権利を尊重する意識向上します!」右横の吹き出しには「私たちのことを私たち抜きで決めないでください」。

皆さん、こんにちは!

デフリンピックで躍動する選手たちの姿が、会場やメディアを通して広く届くようになりました。

“きこえない”という枠にとらわれず、周囲の理解や気づきが少しずつ広がっている──そう感じています。

そこで今回は、改めて「障害者権利条約」について触れてみたいと思います。

目次

私たちのことを私たち抜きで決めないで

Nothing About us without us

私たちのことを私たち抜きで決めないで 』

障害に関わる制度などを整えるとき、当事者の声を中心に進めるべきなのに、実際には当事者以外の立場で決められてしまう──

そんな背景を変えていくために、世界中の当事者が集まり、「障害のある人が差別を受けることなく、好きな場所で暮らし、自由に移動し、学び、働く権利を守る」ことを目的に作られたのが、「障害者の権利に関する条約(障害者権利条約)」です。

この条約は2006年に国連で採択され、2008年5月に発効しました。

日本は2014年1月に「障害のある人の人権と自由を守ることを約束する」として批准(※)しました。

※批准:条約に書かれた内容を守ることを正式に表明すること。

批准する前に、当事者とともに進めた国内の法整備

この条約の理念を日本で実現するには、法律の整備がとても重要でした。国内における障害者の権利に関しての法律がまだ充分に整備されていないため、国連が定めた障害者権利条約を締結するために、当事者も一緒に法整備を取り組みました。

  • 2011年8月 障害者基本法の改正
  • 2012年6月 障害者総合支援法 成立
  • 2013年6月 障害者差別解消法 成立

こうした取り組みを経て、2013年11月に衆議院、12月に参議院で条約締結が全会一致で承認され、翌2014年1月に批准、2月に発効しました。

私たちのことを私たち抜きで決めないで

この言葉は、障害の有無にかかわらず、世界中の多くの人に社会の在り方を問い直すきっかけとなりました。

しかし、その理念が現実に十分反映されているとは言えず、まだ道半ばです。

これからも「当事者が、当事者に関わる課題に主体的に取り組むことが何より重要である」という考え方を大切にし、より公正でより良い社会を目指していく必要があります。

変わりつつある社会での新たな工夫

SNSやメディアを通じて、障害のある人の表現や発信が日常的に届くようになり、社会や人々の意識も少しずつ変わってきていることを実感します。

東京2025デフリンピックでも、“きこえ”が異なる選手たちが公正に挑戦できるよう、ランプや旗など目で見てわかる仕組みといった環境整備や工夫を取り入れられました。

一方で、お店などでも「きこえない人が来るかもしれない」という想定や工夫が十分であるとは言えない。

デフリンピックでの工夫をヒントに、特別な支援ではなく、誰もが自然に情報を得て参加できる環境を日常にも取り入れることで、暮らしやすさが自然に広がっていくと思います。

国連による障害者権利条約の審査とは?

スイス・ジュネーブにある国連欧州本部で、4年ごとに権利委員会と、障害者権利条約を批准した国と建設的な対話をします。

障害者に関わる制度などをどのように進めているのか、条約にある条文の約束をしっかり果たしているのかどうか、確認とともに建設的な対話を行うということです。

日本は2022年8月にスイスのジュネーブで行われました。

障害者権利条約の審査では、条約の第1条から第33条について、事前に政府からの「報告書」(どのような法律を定めて施行したのかなど)、障害者団体などの「パラレルレポート」(課題や改善点を独自でまとめたもの)を提出します。

それを審査担当の権利委員会が読み込み、日本の現状について質問し、日本政府が回答する流れとなっています。

その後、2022年9月に権利委員会から日本政府に勧告が出されました。

第1条から第33条までの勧告と懸念事項を以下の文書にまとめ、

「まだまだ改善しなければならないことがたくさんある」

と発表しました。

日本の第1回政府報告に関する総括所見(外務省)

手話についても、以下の条文に課題があると指摘されています。

  • 第13条の「司法手続の利用の機会」
  • 第21条の「表現及び意見の自由並びに情報の利用の機会」
  • 第24条の「教育」
  • 第25条の「健康」

特に情報保障の面から、手話通訳や字幕の不足、手話を使用する場や研修の機会、活動分野における手話通訳の確保が十分でないと指摘されています。

さらに、日本手話を法律上で公用語として承認していないという指摘もありました。なお、日本語も法律上の「公用語」と明記されてはいませんが、事実上の言語として使われています。

これらの課題に関する定期報告は、2028年2月とされています。それまでの間に、政府が改善へ向けて取り組みを進めていくことを期待しています。

また、「手話に関する施策の推進に関する法律」が令和7年6月18日に全会一致で成立し、25日に公布・施行されました。

手話は言語であるという認知が広がり、メディアなどを含む情報保障の分野でもより一層定着していくことを願っています。

まとめ

デジタルの進化により、私たちの生活が便利になりました。スマホ1台で、電話リレーサービス、メール、SNS、文書作成もできるようになりました。

スマホの「ライブキャプション」「サウンド認識」、テレビの字幕放送や手話放送、舞台での手話通訳など、情報保障のサービスは少しずつ整ってきています。AIの普及で、駅など公共の場でも文字起こし機器が導入され、意識や環境が以前より改善されてきたと感じます。

それでも、日本全体に十分行き渡っているとは言えません。そんなときは、必要な環境や配慮が届くよう、自分たちから呼びかけることも大切だと思います。

私は先日、新しくリフォームされた、障害者も利用できるセンターへ視察する機会がありました。

スタッフの案内でさまざまな講座について説明を受け、「私は手話通訳が必要ですが、可能ですか?」と聞くと、「可能です。ぜひ要望してください。私たちスタッフは知らないことがあるので、何が必要か教えていただけると助かります」と答えてくれました。

障害の有無に関わらず、「興味がある」「行ってみたい」と思ったら、まずは行動してみようと改めて感じました!

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上のタイトル「『障害者権利条約』とは?」。真ん中には拍手しているイラスト。左横の吹き出しには「障害者の権利を尊重する意識向上します!」右横の吹き出しには「私たちのことを私たち抜きで決めないでください」。

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この記事を書いた人

CODAの2人を育てる母として日々奮闘中。
読書とキャンプが大好きで、心地よいロケーションで本を読む時間が私の最高の癒しです。
週間デフニュースを中心に、さまざまな情報を発信しています。
よろしくお願いいたします。

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