中等度難聴ライターのナツです!
私は生まれつき感音性中等度難聴で、
聴力は両耳とも約50dB。
18歳から補聴器をつけ始めました。
高校生まで、大学生になってからも
難聴であることを周りの友人や先生になかなか打ち明けることができなかったことは
これまでの記事にも書いてきました。
それなのに私は、学校教員になる道を選びました。
どうして教員になりたいと思ったのか。
それには自分自身が中等度難聴であることはやはり関係していますが、
今回は教員になる前の、教育実習での2つのエピソードをシェアします。
どちらも、難聴の私が教員になんてなれるのだろうか……と不安になったエピソードです。
教育実習その①
難聴を隠したまま臨んだら……
本当に教員なるかはさておき、大学で教職課程を取っていました。
そして4年生の初夏、出身中学校で教育実習を受けました。
教科は保健体育科。

保健体育の授業を担当するのはもちろんのこと、
指導教官の担任クラスに入って生徒たちとともに活動し、放課後は部活動に参加し、それが終わったら全員分の体育カードを読んでコメントを書き、さらに教材研究、研究授業の準備……と、
とても忙しい日々を送りました。
あろうことに、私は難聴であることを指導教官にも生徒たちにも隠したまま、実習を受けました。
補聴器はつけていましたが、髪ですっぽりと覆われています。
本当に、どうやって乗り越えることができたのか、自分でも不思議でなりません。
体育の授業は、大きな声を出して動き回って盛り上げて、なんとかなったのかもしれません。
保健の授業は、座学です。私が一方的に話し続けるわけにはいかないので、生徒に質問し、答えをきいて、というやりとりが生じます。
私は教壇に立ったままでは生徒の声がきき取れなかったので、机の間を歩き回りながら、発言する生徒にできるだけ近づきました。
挙動不審ですよね……。
指導教官には、「いちいち近寄らなくていい」と言われてしまいました。
学びの多い充実した教育実習だったのですが、

生徒の声がきこえない教員なんて、授業は成り立つのだろうか。
職員会議で声がきこえない。重要な連絡事項をきき漏らすに決まっている。
保護者と電話で話せるだろうか。この先生話にならない! って、クレームが入るんじゃないだろうか。
と、ネガティブな考えはいくらでも出てきます。
やっぱり私に教員は無理かな、と諦めてしまい教員採用試験は受けませんでした。
教育実習その②
難聴の実習生として臨んだけれど……
その後いろいろあって、特別支援学校の教員を目指すことにしました。
通っていた四年制の大学を卒業後、別の大学にもう一年通って
特別支援学校の教員免許を取得するために勉強しました。
特別支援学校では、様々な特性をもつ子どもたちが、その特性による困難と向き合っている。
私も、ちゃんと自分の聴こえにくさを受け止めなければ。
特別支援学校の先生になりたいのに、もう隠している場合じゃない! と、
今度は難聴であることをしっかり報告し、
知的障害特別支援学校での教育実習に臨みました。
指導教官からの提案で、研究授業では『はらぺこあおむし』を歌いながら絵本の読み聞かせをすることになりました。
まずい……。
私は歌が、超下手なのです(難聴のせいにしています)。
中学・高校の合唱祭はほとんど口パクしていました。
研究授業に参観しに来る大勢の教員の前で歌うなんて、考えただけでも顔から火が出そうですが
仕方ない、たった小一時間の恥! と覚悟を決めて練習し、当日を迎えました。
研究授業後の反省会。
それが終わった後、音楽科の教員に呼び止められ、こう言われました。
子どもたちには、音程やリズムがずれていたっていいから楽しく歌ってほしい。けれど教員は、正しい音程で歌を届けるべき。あなた、歌が苦手なんでしょう? どうして断らなかったの。
はっ、としました。涙が止まりませんでした。
歌が苦手な自分のことばかり考えて、
その授業を受ける子どもたちのことを考えていなかった……。
難聴でも特別支援学校でなら働けるかも、私の経験が役に立つかも、
なんて甘い考えだったことを、痛感しました。
まだまだ自分の傷や辛さにばかり目が向いていたのです。
その年に教員採用試験を受け、特別支援学校の教員になることができました。
その音楽の先生から気づかされたことは、このようなことです。
子どもたちは教員が難聴かどうかの前に
ただひとりの先生として、人として、見てくれる。
私は難聴だからできること・できないことを自分でしっかり理解した上で
教員として、子どもたちにとっていい学びの場をつくることを第一に考える必要がある。
難聴教員の存在が子どもたちにとっていい学びになることももちろんある。
でもできないことがあるなら、教員同士相談し協力し合う。
「中等度難聴の私に教員なんて務まらないのでは?」という問いに自分で答えるならば……
決してそんなことはありません。
しかし大切なことは、難聴でも何であっても、教員それぞれの得意・不得意をカバーし合いながら、子どもたちのためによりよい学びの場をつくりあげることだと、教育実習を通して学びました。

