こんにちは。
梅雨の気配を感じる季節になりましたね。みなさん、いかがお過ごしでしょうか。
最近、ある出来事をきっかけに感じた「言葉の疲れ」について、今日はお話したいと思います。
自身はろう者なので、家庭内やろうの友達同士では主に日本手話で会話をしています。
一方、テレビやメディア、そして仕事や家庭の外では日本語を使う場面が多く、自然と二つの言語(日本手話と日本語)を使い分けて暮らしています。
つい最近、2時間ほどパソコンのZoomで日本語をフル活用してリアルタイムで相手とチャットをする機会がありました。 相手は手話がわからないので、私は高速タイピングしながら、日本語を次々に組み立てていく。 そんな時間がずっと続いた時、ふと気づいたのです。ものすごく頭が疲れていることに。
日本語は嫌いではなくむしろ好きです。日本語を使って、キコニワの記事を書いているこの時間も、楽しいです。そういえば大学時代は、学内にろう者がいなかったため、ずっと日本語だけを使っていました。それでも当時はあまり疲れを感じなかった記憶があります。若さゆえだったのかなと、今は思います。もちろん今も十分若いとは思っていますが・・・(笑)しかし、日本語だけをずっと使い続けると・・・老後の人生を想像した時、「できるだけ手話で、自分がいちばん楽でいられる言語で生きていたい」と思うのです。誰にとっても、自分にとっていちばん自然な言語で暮らせる場所を求めることは決して特別な願いではなく、人としての当たり前の権利なのではないかと思います!
そんな時にふと、1年ほど前にテレビで見た埼玉の、手話を公用語としている聴覚障害者向けの老人ホーム「ななふく苑」を思い出しました。

当時、そこで暮らす高齢の方々が、手話で自然に会話し、笑い合っている姿を画面越しに見て、衝撃を受けました。それまで自分の老後について、まだ先のことだと思っていたし、「どうにかなるだろう」と、どこか他人事のように思っていた部分もありました。 でも、その映像を見て、「自分にとって心地よい居場所とは」を真剣に考えるようになりました。そして同時に、日本という国が高齢者と障害者にやさしい社会だとは、必ずしも言い切れない現実にも気づかされました。高齢になると賃貸住宅を借りにくくなったり、孤独死のニュースが後を絶たなかったり。年金問題など、まだまだ未熟すぎる社会の仕組みや視線が冷たいように感じることがあります。
ろう者の場合、その困難がさらに重なります。言語的な孤立、情報格差、そしてわかり合える相手が近くにいない孤独。 そんな中で、手話で生きる老後の人生を支える高齢者施設の存在は、決して特別なものではなく、「あって当然のもの」なのだと、私は思うようになりました。
しかし日本では聴覚障害者向けの施設が全国でも10ヵ所を超えていません。恥ずかしながらもっとあると思っていました・・・
施設の一覧はこちらから見ることができます。
🔗: 全国の聴覚障害者高齢者施設一覧(日本聴力障害者連盟)
養護老人ホーム あすらや荘(広島県)
🔗https://social.hongwanji.or.jp/facility/facility_030.html
昭和51年7月1日に開設された日本で最初の聴覚障害者専用の養護老人ホームで、 昭和の時代から、手話で生活できる場をつくろうとした取り組みがあったことに、感動を覚えます。
聴覚障害者養護老人ホーム やすらぎ荘(北海道)
🔗 https://www.wakafuji.or.jp/05yasuragi
昭和28年から聴覚障害者が生活しているわかふじ寮とやすらぎ荘の施設があったことから、 新得町の人口約5000人の町に200名の聴覚障害者(人口の3%)が生活しているそうです。 町民が聴覚障害者との接し方に慣れていたり、自然と暮らしやすい町になったとのことです。 3%という割合は驚きです!ろう者にとって、自然に暮らしやすい町があるなんて・・・本当に理想的ですね。
出典元:https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/tyosa/h28kokusai/h7_07_01.html?utm_source=chatgpt.com
いこいの村・梅の木寮(京都府)
🔗https://www.kyoto-chogen.or.jp/ikoi/umenoki/index.html
自然豊かな環境に位置し、周囲には静かな田園風景が広がっています。私自身も、自然に囲まれた場所にいるとホッとします。こうした感覚は、人間の本能的なものかもしれません。 自身もこういう穏やかな場所で、ゆったりとした老後を過ごせたらいいなと思います。
聴覚・言語障害者養護老人ホーム田尻苑(福岡県)
🔗https://tajirien.jp/new_hp/
九州で初めての聴覚・言語障害者に特化した養護老人ホームです。
あすくの里(大阪府)
🔗:https://www.daichofuku.or.jp/facilities/asuku/
ろうあ高齢者が安心して利用できる社会資源がない中で、大阪聴力障害者協会をはじめ、 ろう学校関係者、手話サークル、手話通訳者など、関係団体が力を結集し、施設建設運動に取り組みました。 市民の皆さまの大きなご協力もあり、2005年に施設が開所したとのことです。地域の皆で力を合わせ、ろう高齢者にとって過ごしやすい環境を整えていくことは、本当に素晴らしいことだと思います。
特別養護老人ホーム 淡路ふくろうの郷(兵庫県)
🔗https://hyoufuku.main.jp/fukuronosato.html
兵庫の聴覚障害者と関係団体が『ひょうご高齢聴覚障害者施設建設委員会』を結成し、 わずか4年間という短期間で5億円もの募金を集め、社会福祉法人を設立されたとのことです。わずか4年で5億円もの資金を集めたなんて、本当に驚きです。いったい、どのような取り組みが行われたのか気になりますね!
ななふく苑(埼玉県)
🔗:https://sai-donguri.org/?page_id=16
先ほど冒頭でも書いたように、この施設はテレビでも紹介されました。自分が、ろう者の老後について真剣に考えるきっかけとなった施設でもあります。
聴覚障害者養護老人ホーム 静幸苑(高知県)
🔗:http://tosa7411.com/seikouen.php
四国初となる聴覚障害者を対象とした養護老人ホームだそうです!あれだけ広い四国でも、まだ1軒しかないのかと驚かされますね。
やっぱり私自身の老後の人生にも、大きな不安があります。日本は、高齢者や障害者にとって、本当に優しい社会なのか? 正直、「はい」とは言えないのが現実です。年を重ねれば、生活の自由は少しずつ狭まり、たとえば賃貸住宅を借りるだけでも苦労します。障害があると、さらに多くの壁があります。それらが積み重なると、「この先、自分はどこで、どうやって生きていけばいいのか」と、考えるたびに胸が痛くなります。
海外ではどうなっているの?
では、日本以外の国ではどうでしょうか?海外でもろう者の老後を支える施設がいくつか存在しています。手話が共通言語として使われていたり、ろう高齢者が自分らしく生きられる工夫がされています。次回は海外のろう者向け高齢施設の紹介をします!日本との違い、そしてヒントになる点もたくさんあるはずです。
次回に続く!お楽しみに!