こんにちは!私は耳が全く聞こえず、右目は光が分かる程度しか見えず、左目だけが少し見える盲ろう者です。
そんな私は旅行が大好きです。小さい頃から家族と国内外の旅行を楽しみました。
(家族でハワイに行きました)
本記事は、私の旅と旅行に対する思いを書きました。
一人旅
20歳の時に初めて一人で大阪と神戸に行きました。新横浜駅から一人で新幹線に乗り、新大阪駅まで行きました。降りる駅を間違えず、安全に目的地まで行けました。健常者や聴覚障害者は、車内放送を聞いたり車内の文字情報を見ることで、次の停車駅などの情報をすぐに得られます。しかし、盲ろうの私は文字情報が見えず、放送を聞くことが出来ません。それでも、降りる駅を間違えることはありません。
視覚情報や音声情報を得る代わりに、私なりに確認する方法があるからです。目的地の駅に着く時刻をあらかじめ調べておき、時間を確認して目的地に近づいていると知ることが出来ます。そして、周りの特徴などの情報も手掛かりになります。例えば、名古屋駅に近づいてくるとたくさんのビルがある、京都駅に近づくと長いトンネルの中を走行します。このように各駅にも特徴があることで、間違えずに目的の駅まで行けます。
初めての旅行で一番緊張をしたのは、新神戸駅の近くのホテルに一人で泊まったときのことです。突然、知らない人が客室に来るかもしれないと想像すると緊張しました。しかし、その後も何度も一人で旅行したので、今では一人でホテルに泊まることに慣れました。
(和歌山旅行。自分で撮りました)
一人で飛行機に乗ったときのこと
鹿児島に行った時、初めて一人だけで飛行機に乗りました。
鹿児島旅行の当日、羽田空港のカウンターで職員に誘導介助をお願いする時、コミュニケーションに困難があるため、私は事前に自分の障害と必要な配慮についてメモを書いておきました。羽田空港でそのメモを見せましたが、羽田空港のカウンターの職員は普通に話し始めました。
しかし、私は耳が聞こえないので、声を聞くことができないと身振りで示すと、職員は急いでボールペンで書いた紙を私に渡してくれましたが、私には文字が細くて見えないのです。「見えない」と示すと、今度は太いペンでメモを書いてくれたので、ようやく通じました。
航空会社の職員は、おそらくこれまで盲ろう者に会ったことがないのかもしれません。盲ろう者への理解が足りないと感じました。しかし、耳が聞こえない、目もよく見えない私に通じるよう一生懸命努力をしてくれました。私に伝えようと様々な工夫をしようとする気持ちは、とても嬉しかったです。他にも周囲の人々が筆談をしてくれることに感謝しました。社会の中には、盲ろう者のことを知らない人がたくさんいます。しかし、私のような当事者が積極的に出かけていき、障害への配慮を受けることで、盲ろう者を理解をする人が増えるかもしれません。
旅行先での楽しみ
私は東京の渋谷・鹿児島おはら祭、そして11月3日に鹿児島市で開催されたおはら祭に参加する機会がありました。
そこでは鹿児島盲ろう者友の会いぶきと一緒に参加しました。社会では盲ろう者のことを知らない人がたくさんいます。そのため、盲ろう者の存在や理解を広めるために皆さんと一緒に楽しんで踊ります。それがきっかけで、たくさんの人々が盲ろう者に興味をもってくださり、嬉しかったです。
2023年3月に家族と一緒に屋久島に行きました。屋久島には、たくさんの山があります。私は小さい時から鎌倉にある山など、山に登る機会が何度もありました。そのことを思い出しながら屋久島の山にある段差や凸凹の道を足の裏の感覚で、現在歩いている場所の様子や危ないところなどの情報を得られました。しかし、とても怖いところもありました。屋久杉から駐車場に向かう時の急な下り道があり、そこは滑りやすく、怖かったのですが、安全に移動をすることができたので、とても良い経験になりました。
(屋久島にて)
旅行をもっと楽しみたい
健常者や聴覚障害者などは、介助を受けずに自由に日本各地やアメリカ、ヨーロッパなど海外旅行を楽しむことができます。しかし、盲ろう者はコミュニケーションや移動、情報入手に困難があるため、旅行には通訳・介助員からの支援が必要です。
自宅から旅行先まで通訳介助員の派遣を受ける場合、通訳介助員の交通費や宿泊費は盲ろう者が支払わなければなりません。私のように一人で移動や宿泊が出来れば良いのですが、そうでない盲ろう者は費用負担があまりにも大きく、十分に旅行を楽しめない現状があります。私は移動や宿泊は一人でも大丈夫ですが、旅行先では現地の盲ろう通訳介助員からの支援を受けています。今後、盲ろう者が旅行をもっと楽しめるように啓発活動をしたいと思っています。たくさんの人々に出会い、盲ろう者の存在や各地にある盲ろう者友の会があることを知ってもらおうと思います。たくさんの人々に盲ろう者に興味をもって欲しいです。また、国内外で利用しやすいように通訳・介助員事業や同行援護事業などを改善することで、盲ろう者が旅行を楽しめると考えています。
(広島旅行。赤い服を着ている方もマラソンが好きな盲ろう者です。)