世界デフニュースNo.14『-ろう者の老後について考える-国内外の聴覚障害者向け高齢者施設』後編

こんにちは!キコニワライターのユキです。
ひさしぶりすぎて、「あれ?まだ続いてた?」と思われていないかドキドキしています。

しばらく更新が止まっていましたが・・・
「-ろう者の老後について考える-国内外の聴覚障害者向け高齢者施設」
後編を、やっとお届けできることになりました。

今回の後編は、日本ではなく海外編です。


前回の記事はこちら ▼

前編でもお伝えした通り、
日本では聴覚障害者向けの老人ホームの数はまだまだ限られており、
正直なところ、私自身も老後の生活について大きな不安を感じています。

では海外では、ろう者はどのような老後を送っているのでしょうか。
どのような高齢者施設があり、どんな工夫がされているのか。
今回は、海外の事例を中心にご紹介していく予定でした。

・・・・・が、実際に調べてみると、
想像していた以上に、海外でもその数は多くありませんでした。
現地語で検索してみても、情報として見つかったのはごくわずか。
「海外は日本より進んでいるところもあるはず」という期待とは、
少し違う現実が見えてきました。

目次

🇺🇸 アメリカの事例

New England Homes for the Deaf(NEHD)

New England Homes for the Deaf
Home - New England Homes for the Deaf New England Homes for the Deaf Learn More 121 Years of Excellence New England Homes for the Deaf (NEHD), founded in 1901, is a life plan community that offers c...


アメリカで見つかった代表的な事例が、New England Homes for the Deaf(NEHD) です。

マサチューセッツ州にあるこの施設は、1901年設立という100年以上の歴史を持つ、ろう者・難聴者・盲ろう者のための高齢者コミュニティの施設です。NEHDの大きな特徴は、「単なる老人ホームではなく、人生の変化にあわせて暮らし続けられるコミュニティ」です。

  • 自立生活から介護・看護まで段階的な支援
  • スタッフはASL(アメリカ手話)とろう文化に精通
  • 視覚的に分かりやすい緊急連絡・設備
  • 入居者以外も利用できる地域交流センターの運営


など、聞こえない人にとって安心して暮らす環境づくりが徹底されています。

ただし、アメリカ全体で見ると、こうした施設は決して多くありません。この点からもろう者の老後を支える環境は、海外でもまだ発展途上であることがわかります。

🇰🇷 韓国の状況

韓国にも同様の施設があるのではと考え、現地語で検索を行いましたが、
「ろう者向け」「聴覚障害者向け」「手話対応」を明確に打ち出した高齢者施設の情報は見つかりませんでした。

考えられる理由としては、

  • 情報がSNSや地域限定で発信されている
  • 一般的な老人ホーム名で運営されている
  • 手話対応があっても明記されていない
    などが考えられます。

この情報の少なさ自体が、
高齢ろう者が安心して暮らせる環境が、まだ十分に整っていない現状を示しているとも言えるでしょう。

※もし韓国の事例をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひ情報をお寄せください。

しかし、残念ながら、日本やアメリカで見られるような“聴覚障害者向けに特化した高齢者ホーム”の情報は見当たりませんでした。

🇸🇪 スウェーデンの新しいアプローチ

関連情報▶︎
https://ju.se/en/research/news/news-archive/2023-05-16-unique-project-will-improve-care-for-elderly-deaf-people.html?utm_source=chatgpt.com

スウェーデンでは、ろう者専用の老人ホームは多くありませんが、
高齢ろう者の在宅ケアの質を高める新しいプロジェクトが始まっています。
スウェーデンの南部にあるヨンショーピング県で行われているのが、
「高齢ろう者・手話を使う人のための訪問介護」です。

  • 手話ができる介護補助看護師が自宅を訪問
  • ろう文化を理解した円滑なコミュニケーション
  • 研究者による継続的な評価・分析

「施設を作る」だけでなく、言語・文化・尊厳を守るケアとは何かを問い直す、非常に示唆的な取り組みをされているのが印象的です。

🇬🇧 イギリスの事例

イギリスで唯一とされている、高齢ろう者向け老人ホームが
Easthill Home for Deaf People です

  • 定員は約15名の小規模施設
  • British Sign Language(イギリス)での生活が可能
  • Deaf Actionが運営

BBCのろう者向け番組「See Hear」でも取り上げられ、選択肢が少ない中で非常に貴重な存在であることが紹介されています。

Easthill の大きな特徴は、スタッフがBritish Sign Language(イギリス手話)を使えることです。
これにより、入居者は自分の母語である手話で安心して日常会話ができ、自分らしく暮らせる環境が整えられています。

当事者の家族からも、「スタッフが手話でコミュニケーションをとってくれるので、本人が安心していると感じられる。これは大きな安心につながっている」という意見が寄せられているほどです。

🇦🇺 オーストラリアの取り組み

オーストラリアでは、現時点で ろう者向けの「老人ホーム」そのものを運営している例は見つかりませんでした。
その代わり、Ageing Well のような 自宅で暮らしながら受けられるケアサービスが存在しています。
施設に入らなくても、必要なサポートを自宅で手話で受けられるという点は、高齢者が思い入れのある地域で暮らし続けるための重要な取り組みです。

Deaf Connect
Ageing Well Services Launch in Victoria - Deaf Connect Deaf Connect commences Ageing Well Services in Victoria to address the increasing needs of Deaf Seniors.   After extensive community consultation, Deaf Connect ...

🇨🇦 カナダの事例

カナダには、高齢ろう者向けに特化した長期的ケア施設として知られる施設があります。
それが オンタリオ州バーリー(トロント近郊)にある「Bob Rumball Home for the Deaf」です。この施設は、カナダで唯一のASL(アメリカ手話)が共有言語である長期的ケア施設とされており、高齢ろう者が安心して暮らせる環境づくりに力を入れています。
Bob Rumball Home は、言語・文化・社会的つながりを尊重したケアのモデルケースとして、他国の高齢ろう者向け施設と比較しても非常に貴重な存在です。これまで紹介してきたアメリカやイギリスの施設と同じく、数が限られている貴重な例であり、ろう者が安心して老後を過ごせる環境づくりの参考になります。

🇳🇱 オランダの事例

オランダには「De Gelderhorst」という、手話を全体とした環境を大切にされている施設が存在しています。施設内のコミュニケーションは主にオランダ手話を中心に行われ、ろう者が音声言語中心の環境に合わせる必要がありません。そのため、ろう者が孤立を感じにくい生活環境が実現されています。また、入居者同士の交流や社会活動の機会も重視されている点が特徴です。高齢になっても社会で人とのつながりを持ち続けられることは、安心して老後を過ごすための大切な要素だと感じます。

De Gelderhorst は、「ろう者が手話環境のまま年を重ねていける」数少ないモデルケースです。

海外を調べて見えてきたこと

今回、複数の国の事例を調べて強く感じたのは、「海外・先進国だからといって、ろう者の老後環境が十分に整っているわけではない」という現実でした。アメリカやヨーロッパには、ろう者のために工夫された施設や取り組みが確かに存在します。しかしその数は決して多くなく、多くの国でまだ限られた事例にとどまっています。
「選択肢が豊富にある」と言える状況には、残念ながら至っていないというのが今回の執筆を通しての印象です。

一方で、各国の取り組みを見ていく中で、世界で共通して大切にされている点も見えてきました。

それは、

  • 手話で直接コミュニケーションができること
  • ろう者の文化や生活背景を理解した上での支援・ケアであること
  • 施設に入ることだけを前提とせず、在宅支援など多様な形を模索していること

といった点です。

これらは、日本におけるろう者の老後を考えるうえでも、決して他人事ではありません。
制度や国の違いはあっても、「手話とろう文化が尊重される環境で、安心して年を重ねたい」
という思いは、どの国のろう者にも共通していると感じました。

今回の記事を通して、海外にはどのような事例があるのかを知るだけでなく、「手話で安心して年を重ねたい」という願いが国を越えて共通していることを感じていただけたらと思います。
そして、ろう者の老後について考えるきっかけとなれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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