キコニワから未来を生きるろう・難聴に送る、
ろう者・難聴者版の職業図鑑

あなたの目指す働き方のヒントに。

さまざまな職種のろう、難聴者にインタビューを行い
職業紹介の記事を連載します。

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目次

会社員(育休中)

坪田 健(つぼた・たける)さん

  ‐ 長崎県出身

 

きこえについて

生まれつき耳が聞こえない。
両親と兄弟(兄と弟)もろう者でデフファミリーのため、家庭内のコミュニケーションは日本手話。
ろう学校は乳幼児クラスから専攻科まで通い、現在の会社に就職。
普段は日本手話、筆談でコミュニケーションをとる。

基本情報

会社員(育休取得中)

製造業の会社に勤める、3児(4歳、2歳、9ヶ月)のパパ。
1年間の育児休暇を取得し、家事・育児を行うほか、手話に関する活動も精力的に取り組んでいる。

1日の流れ

  

会社(製造業)勤めるまでの経緯

高校生のとき、大学進学を選択する同級生がおらず、先輩の多くも就職を選択していたため、 自然と大学進学は考えず、就職を選択。
そして、学校側から提示された限られた求人の中から、先輩の多くが就職していた今の会社に就職することを決める。

こんな人が向いている!

① コツコツと集中して作業できる
同じ作業を正確に続ける仕事が多いため、根気強く取り組める人に向いている。

② 集中力の維持が得意
作業を長時間続けることもあるので、集中力を保ちながら一つひとつの工程を丁寧に進めることが大切。

③ ものづくりが好き
自分の手で部品を組み立て、形になっていく過程にやりがいを感じられる人に向いている。

 

求められるスキル、必要な知識

① 生活リズムに柔軟に対応できる力
製造業は二交代制や三交代制が多く、生活のリズムの調整ができないと身体がついていけないため、柔軟に切り替えられる必要がある。

② 集中力
毎日同じ作業の繰り返しとなるため、正確な手作業を継続するには集中力が求められる。

③ 手先の器用さ
細かい作業が多く、器用であれば効率よく作業を進められる。

 

教えて!センパイの経験談

育休取得を決めたきっかけ

“二人の子ども”という意識

――育児休暇の取得を決めたきっかけを教えてください。

坪田

テレビで少子化のニュースをよく見ますよね。共働きの家庭が増えていることも、その理由の一つだと思います。

昔に比べると離婚も増え、「家事や育児は女の人がするもの」という考え方に不満を持つ人が多いと聞いたことがあります。
でも、子どもは本来、二人の子どもです。どちらか一方に任せるんじゃなくて、二人で育てるものだと思っています。
だからこそ、ちゃんと子どもと向き合う時間を持ちたくて、育休を取ることにしました。

誰もいないのなら…

――ろう者の男性で育休というのはまだ珍しいですよね。

坪田

そうなんですよ。
昔は「男が育休なんて」と冷やかされる時代でしたが、今は社会が少しずつ変わり、男性が育休を取ることは珍しくなくなってきました。
そんな中で、まわりに育休を取ったろう者の男性がいませんでした。だったら、自分がその“最初の一人”になってみようと思いました。

誰かが一歩を踏み出せば、次の人が続きやすくなる。
そんな気持ちもありました。

実際に育児をしてみて…

仕事よりも大変!

――育休を取得していかがでしょうか。

坪田

正直、思っていた以上に大変だと感じました。
子どもが生まれるまでは、仕事が終われば帰宅後に疲れて寝るだけでしたが、育児は24時間ずっと関わる必要があり、本当に休む暇がありません。

仕事は7〜8時間勤務が多いと思いますが、育児はそれ以上の時間がかかります。夜も、夜泣きや寝かしつけで睡眠不足になりがちです。
世の中のパパは、この覚悟を持つことが必要だと思いますね。

育休のメリット

――育休を取得していかがでしょうか。

坪田

その中で、育児の大変さや、昔のパパ・ママのすごさをあらためて感じました。

育休にはメリットもデメリットもあります。
メリットは、やっぱり子どもの成長をそばで見守れること。
関わる時間が長くなる分、毎日が新しい発見の連続で、とても楽しいです。

この前まで新入社員だったような気がしても、実際はもう15年。あっという間に時間が過ぎていくのを実感してからは、「子どもの成長は本当に一瞬なんだ」と強く思うようになりました。だから今は、お金よりも子どもと過ごす時間を大切にしています。

デメリットは……夫婦げんかが増えることですね(笑)

最新の技術を育児にフル活用!

――聞こえないならではの工夫はありますか。

坪田

スマートウォッチで対応しています。泣き声を感知したら、振動で知らせてくれるというものです。
また、専用の見守りカメラ(CuboAi)を設置しています。赤ちゃんの動きを感知してくれるアプリと連携して、倒れていたり、うつ伏せ状態が長かったりと危険を感知するとメールで知らせてくれるものです。

昔は赤ちゃんの腕と自分の指に紐をつけて寝るのが定番な時代に比べ、今はずいぶん便利な時代になりました。

 

育休取得による、まわりの反応

変わりゆく社会

――男性で育休を取得されましたが、まわりの反応はどうでしたか。

坪田

3人の子どもがいまして、3人とも育休を取得しました。
1人目で育休を申請したときは、上司にあまりいい顔をされませんでした。 まわりからも「男なのに育休取るの?」と冷やかされることが多かったです。
しかし、2人目のときにはそうした反応もほとんどなくなり、3人目のときには「おめでとう!育休取るの?」と声をかけてもらえるようになりました。

少しずつですが、社会全体が男性の育休取得に前向きになってきていると感じます。
令和の今は、男性も自然に育児に参加できる時代になってきているんじゃないですかね。

育休取得に対する不安

生活費はどうにかなった

――育休取得時の不安はありましたか。

坪田

年収が下がるため、生活のやりくりができるか心配でした。
しかし、実際に工夫してみると、思ったほど心配はいらないことが分かりました。

子どもが生まれるまでは、趣味や友人との飲み会にお金を使っていましたが、子どもが生まれてからはパパとしての自覚が芽生え、自然と出費も減りました。友人と飲みに行く回数も減り、生活費のやりくりも問題なくできています。

嬉しい瞬間

何より子どもの成長

――育児で嬉しいと思う瞬間はありますか。

坪田

やはり、子どもの成長を感じる瞬間が一番楽しいですね。
最近では、一番上の子の言葉の数がぐんと増えてきました。
教えていないのにプラレールの車両の名前を言えるようになっていて、思わず感動しました。
また、手話で会話できる幅も広がってきて、毎日がとても楽しいです。

悩んだこと、悩んでいること

ろう学校ならではの悩み

――今後の悩みはありますか。

坪田

復職後、夫婦ともに共働きをしていくなかで 片道1時間かかるろう学校への送迎や子育ての両立ができるか、不安があります。
それでもどうにか工夫しながらやっていくしかないなと思っています。

 

夫婦での協働の仕方

大切なのは補い合うこと

――夫婦での育児ではどういった工夫をされていますか。

坪田

自分の苦手分野である料理は奥さんにお願いする代わりに、皿洗いや水回りの掃除などを担当し、協力しながら二人で子育てをしています。

夫婦円満の秘訣としては、奥さんに何か言われる前に、自分で気づいて動くことかなと思います(笑)

 

学生時代の印象的な出来事

ヤンチャな子だった

――13歳の頃はどんな性格でしたか

坪田

勉強嫌いで、気が短かったと思います(笑)
今となっては恥ずかしいのですが、悪さばかりする問題児でした。

青春を謳歌

――記憶に残っている出来事はありますか。

坪田

サッカーや野球をやりたかったのですが、学校の部活は陸上しかなく、しかも全員入部が強制だったため、陸上部に入りました。
夏休みはずっと練習が続きましたが、練習のあと友達と自転車でゲームセンターに行ったり、夜は友達の家に泊まったりして、思い切り青春を楽しんでいました。

 

学生時代にしておくべきこと

何事にもチャレンジ!

――坪田さんが思う、学生時代にしておくべきことは何でしょうか。

坪田

ろう・難聴の先輩とたくさん会う機会を作ることをおすすめします。
同級生や歳の近い先輩・後輩だけでなく、卒業生の方ともつながることで、多くの情報や経験を得ることができます。

また、今はインターネットで何でも調べられる時代です。
自分から積極的に情報を調べ、取りに行く姿勢も大切です。
そして、「自分にはできない」と決めつけず、何事にもチャレンジすることを大切にしてほしいと思います。

 

さいごに…

座右の銘

日ごろから心に留めている言葉を聞くことで
その人となりや、その人の歩んできた道が
垣間見えると思い、聞いてみました!

「我が生涯に一片の悔い無し」

――最後に座右の銘を聞かせてください!

坪田

漫画『北斗の拳』の登場人物、ラオウの生涯最後で台詞にある「我が生涯に一片の悔い無し」です。

――その言葉にはどんな意味が込められているのでしょうか?

坪田

これまでの人生で紆余曲折ありました。たくさんの失敗もしてきました。

しかし、その失敗を乗り越えて今の自分がいます。結婚し、3人の子宝にも恵まれ、自分にとっての幸せを日々噛み締めています。

過去の失敗がなければ、今の自分はいないでしょう。
北斗の拳のラオウのセリフやポーズは、シビれるくらい格好いいので気に入っています。

 

世の中のパパへのメッセージ

3人目の子どもが生まれ、育児休暇を取得し、毎日子どもと過ごしています。
昭和時代は男性が働き、女性が主婦になるという考え方が強いものでしたが、今は時代が変わり、令和の今は男女平等、共働きが増えてきたと思います。
女性が子どもを産み、育児も全て担うのではなく、二人で子育てをする必要があると思います。まわりからもよく言われるのですが、子どもの成長は本当にあっという間です。その時間はかけがえのないもので、1日1日の成長を見守るのがとても楽しいです。
世の中のパパも子どもが生まれたら積極的に育休をとっていきましょう!

坪田

育児休暇の取得を考えているあなたへ(手話動画)

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この記事を書いた人

ひとり旅をこよなく愛するアラサー。
「面白そうな情報ゲット!」
「視野が少し広がった!」
世界が拡がる、そんな記事を
お届けできたらと思っています。

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