皆さん、こんばんは!
前回の記事はこちらです。異なる手話や文化に出会うことで、世界とのつながりが広がっていく可能性を紹介しています。ぜひあわせてご覧ください✨

はじめに
私は生まれた時から盲ろう者です。盲ろう者にとって、移動・コミュニケーション・情報の取得は、日常生活の中でも特に大きな課題です。そのため、一人で外出することが難しいと考えられる場合も少なくありません。しかし、私はこれまで一人で家を出て、さまざまな場所へ移動する経験を重ねてきました。東京や横浜などの大きな駅を利用する機会も多くあります。
一般的に、大きな駅は人の流れが多く、構内も複雑で、慣れていない人にとっては迷いやすい場所です。実際に、視覚と聴覚を使える人でも、乗り換えや路線を迷うことがあると聞きます。
私は盲ろう者でありながら、JR線や私鉄など間違えることなく目的の電車に乗ることができます。その理由は、「触覚」や身体の感覚を通して駅の環境を感じ取っているからです。
大きな駅で感じる「空気」と「流れ」
東京駅、新宿駅、渋谷駅、池袋駅などの大きな駅では、常に多くの人が行き交っています。私はその中で、人の流れや空気の動き、床や空間の広がり方などを身体で感じながら移動しています。
たとえば、人の流れが一方向に強く動いている場所は、多くの場合、主要な乗り換え通路や出口へ向かう動線になっています。また、改札の近くでは人の密度や動き方が変化します。
このような環境の変化を触覚的に感じ取ることで、私は駅の構造や方向を理解しています。つまり、私にとって駅とは、単なる「建物」ではなく、身体で感じる空間の地図なのです。
電車の振動から駅を知る
電車の中では、通常、車内アナウンスや表示によって次の駅の情報が伝えられます。視覚や聴覚を使える人は、これらの情報から現在地を把握することができます。
しかし、盲ろう者である私は、その情報を直接得ることができません。その代わりに、私は電車の振動で走行の変化を感じ取っています。
たとえば、大船駅、横浜駅、東京駅、渋谷駅、新宿駅、池袋駅などの大きな駅に近づくと、電車の速度や揺れ方が少しずつ変わります。ブレーキのかかり方や線路の状態によって、振動の特徴が変化するのです。その微妙な変化を身体で感じることで、私は「まもなく駅に到着する」ということを理解しています。
京都駅で感じる到着のサイン
私は2026年3月まで3年間、京都芸術大学に通ったため、京都に行く機会がありました。その時、新幹線を利用して、京都駅で降ります。新幹線の車内には、ドアの上にあるモニターに字幕で次の駅が表示されます。しかし私はそれを見ることができません。その代わり、京都駅に到着する前、長いトンネルを通過し、その後に列車のスピードが徐々に落ちていきます。私はこの一連の変化を触覚的に感じ取ることで、「もうすぐ京都駅に到着する」と理解しています。このように、列車の振動や速度の変化は、私にとって重要な情報の手がかりになっています。
おわりに
多くの人にとって、駅の情報は「見る」ことや「聞く」ことによって得られるものです。しかし、盲ろう者である私は、主に「触覚」を通して駅や空間を理解しています。
見えない、聞こえないという状況の中で、私は別の感覚を使いながら世界を感じ取っています。この経験は、単なる個人的な工夫ではなく、これからの社会におけるサインや情報のあり方を考えるうえで重要なヒントになるのではないかと感じています。
もし、触覚や身体感覚を活用したサインシステムが社会の中に広がれば、盲ろう者だけでなく、多くの人にとって利用しやすい環境が生まれる可能性があります。駅という公共空間を、より多くの人が安心して利用できる場所にしていくために、触覚を手がかりとした新しいデザインの可能性を、これからも探っていきたいと思います。

