盲ろう者として社会人になる──働く前に考えた「できること」と「必要な環境」

皆さん、こんばんは!

前回の記事はこちらです。盲ろう者として、大きな駅などでの移動時に感じる「触覚」について紹介しています。ぜひあわせてご覧ください🙌


目次

はじめに

2026年4月、私は社会人として新たな一歩を踏み出しました。盲ろう者が働くということは、期待と同時に、多くの課題と向き合うことを意味します。

本記事では、学生時代に培ってきた経験と、これから社会で働くうえで考えていることを整理しながら、自分自身の現在地を言葉にしたいと思います。

1.学生時代に学んだこと

私は2026年3月に京都芸術大学大学院修士課程を修了しました。大学院では3年間にわたり、「触覚のアフォーダンスを手がかりとしたサインシステム」の研究に取り組んできました。

研究を進める中で、イギリス、オランダ、ノルウェーを訪れ、国内外の多様な人々と出会い、交流する機会にも恵まれました。こうした経験を通して、自分の感覚や身体を起点に社会を捉える視点を深めることができたと感じています。

視覚や聴覚に依存しない情報のあり方を探る中で、「触れることで理解する」という新たな可能性に気づきました。この視点は、単に障害のある人のためだけでなく、すべての人にとってわかりやすい環境づくりにつながるものだと考えています。

2.社会人になることへの期待と不安

私は4月1日から社会人としての生活をスタートしました。学生時代は学びや制作が中心でしたが、これから仕事を通して社会とつながり、自分の考えや表現をより具体的な形で届けていくことになります。

その一方で、責任の重さや働くことの難しさも強く感じています。

特に、盲ろう者としてどのように働き、自分の力を社会の中で発揮していくのかは、大きな課題です。

盲ろう者はコミュニケーション、移動、情報取得の面で困難があります。そのため、情報保障や合理的配慮は不可欠です。しかし、それらが実際の職場でどのように整えられるのかについては、不安もあります。

一方で、すでに企業などで活躍している盲ろうの先輩がいることも事実です。そうした存在は大きな希望であり、自分自身の可能性を考えるうえでの支えにもなっています。

私自身も、盲ろう当事者として、触覚デザイナーやアーティストとしての活動を通じて、多くの人に新たな視点を届けていきたいと考えています。

3.これから社会で実現したいこと

大学院では、「触覚サインボタン」や「握手の手すり」といった作品を制作しました。これらは、視覚や聴覚に依存しない新しいコミュニケーションや案内のあり方を提案するものです。

今後は、こうした研究や制作を社会の中で実装し、より多くの人に知ってもらう機会を増やしていきたいと考えています。

単なる作品として終わらせるのではなく、実際の公共空間や日常生活の中で活用される仕組みへと発展させていくことが目標です。それは、障害のある人のための特別な仕組みではなく、誰にとっても使いやすい環境をつくることにつながります。触覚を活用したデザインは、これからの社会における新しい選択肢の一つになり得ると考えています。

4.おわりに

社会人としてのスタートラインに立った今、私は期待と不安の両方を抱えています。

しかし、盲ろう者としての経験と触覚サインシステムの研究は、視覚や聴覚に依存しない新しい情報伝達のあり方を社会に提示できる可能性を持っていると感じています。

盲ろう者として働くことは決して簡単ではありません。しかし、その過程そのものが、これまで当たり前とされてきた社会の仕組みを見直し、より多様な人々が参加できる環境を考えるきっかけになるはずです。
その実現のためには、合理的配慮に対する理解と充実が欠かせません。
例えば、働きやすい環境の整備や、円滑なコミュニケーションを支える情報保障の仕組みが求められます。

これらは、特定の人のためだけではなく、すべての人にとって働きやすい環境づくりにもつながります。
私自身も、当事者としての視点と研究の知見を生かしながら、社会に具体的な変化を生み出していきたいと考えています。

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この記事を書いた人

たばた はやと:触覚デザイナー
1997年東京生まれ、現在は横浜在住、京都芸術大学大学院に在学中。先天性盲ろう者。コミュニケーション手段は、接近手話・触手話・指点字・筆談など。趣味はマラソン・旅行・2人乗りのタンデム自転車。

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