中等度難聴ライターのナツです!
SNSで趣味に合うイベントやコミュニティを見つけて参加したり
オンラインスクールで興味のあることを学んだり
イベントのアーカイブ映像を都合の良い時間に視聴したりできる世の中。


しかし、難聴で耳がきこえにくいとなると
趣味や興味に突き動かされるままに飛び込む!
というわけにはいかず、
無意識にブレーキをかけてしまいます。

きき取れるかな。
きこえなかったら参加するだけ無駄かも。
やってみよう、行ってみようと決めても、
不安は尽きません。

主催者に、難聴だって言っておいた方がいいかな。
何か配慮してもらえるかな。
面倒くさがられるかな。
オンラインだと口形が読みにくいんだよな。
字幕はつくのかな。
文字起こしアプリの使用をお願いしてみようか……。
逡巡の末、やっと決心が固まれば主催者に連絡し、
文字起こしアプリについて説明や相談を重ねる……。
私一人のために手を煩わせているのではと申し訳ない気持ちになったり
他の人たちはこんな事前準備をせずとも
ちゃんときき取れるのだから羨ましいなあ、と思ってしまったりしていました。
イベントの案内に、まさかの文字を発見!
あるとき、SNSを見ていると
とあるカフェでの読書会のお知らせを見つけました。
その名も、
そして驚くべきことに、こんな文字がありました。
情報保障
筆談、UDトークのご用意が可能です。
必要な方はご予約の際にお伝えください。
・情報保障……年齢や障害の有無等に関係なく、誰でも必要とする情報に簡単にたどり着け、利用できること。「東京都福祉局 ハートシティ東京|情報提供の方法(情報保障)」より
・UDトーク……音声認識と自動翻訳を活用した、生活やビジネスの様々なシーンで活用できるアプリ。「UDトーク|UDトークとは?」より
聴覚障害に関する講演会などで
手話通訳者やパソコン同時通訳者が手配されていることはあります。
参加したいイベントの主催者に、自ら
「文字起こしアプリを使わせてほしい」と相談したことも何度もあります。
けれど、そこは障害に関する施設や店舗ではなく、カフェ。
その読書会は、障害に関するテーマというわけでもない。
それなのに、自分から申し出る前に「情報保障」「UDトーク」「筆談」の文字を目にするなんて! と、びっくりしてしまいました。
(すぐに申し込みました)

撮影:ナツ
主催者は
荒川区にあるカフェ「白と青と」の店主である、モモさん。
下北沢にある新刊書店「本屋B&B」の書店員である、舟喜さん。
お二人は、それぞれのお店に立ってお客さんと向き合ったり、イベントを企画したりする中で
障害をはじめ様々な背景をもつ人のことを想像し考えてこられたのだと思います。
そうでなければ、あのような案内文は書けません。
完璧な情報保障はない、それでも……
当日。『母の友』という雑誌を通して
自分の気持ち、家族のこと、子育てのこと、社会のことなどを
お菓子を食べながらゆったりと語り合いました。

撮影:ナツ
実際、情報保障にはどうしたって限界があります。
「必要とする情報にたどり着けること」という目的は同じであっても、
その人のもつ障害の種類や程度によって、情報保障の手段が変わるのはもちろんのこと。
「自動文字起こし」に関して言えば、まずは誤字脱字の問題があります。
人間の声は、人それぞれ異なり、不安定で、環境に大きく左右されるものです。
人が増えれば増えるほど、声は動き揺らぎます。
それをすべてキャッチし正しく文字化することはできません。
編集機能を使って、その場で誤字脱字を修正していく担当者がいれば理想的です。
しかし運営側としては、そこに人員を割くことも簡単ではないでしょう。
さらに、話し言葉がそのまま文字になっても同じようにスムーズに理解できるかというと
そうではないように感じています。
それを、ひとつの方法、ひとつのツールで解決することは至難の業。
だからこそ、情報保障を提供する側は「待ち」のスタイルになることは仕方ないと思います。検討すべきことが多すぎますから……。
それなのに!!!!! と、
私は、モモさんと舟喜さんに感謝でいっぱいです。
「ああ~よくきこえた」「よくわかった!」と思えたらもちろんいいですが、それよりも何よりも
「難聴の人が来るかもしれない」と想像し、「難聴の人も参加しやすいようにしよう」と考えて、場を整えてくださったことが、心から嬉しかったのです。
字幕や文字起こしのつくイベントが増えますように
もちろん、この読書会での会話がすべてきき取れたわけはありません。
けれど「わからない、どうしよう……いつきき返すべきか……」と一人焦ることはありませんでした。
きいて、文字起こしを見る。頼るべき情報が声だけじゃない、という安心感。
モモさんと舟喜さん、参加者の皆さんが、難聴者と文字起こしアプリの存在を意識してくれている、という心強さ。
ゆったりとした気持ちで、読書会での対話を楽しむことができました。
聴覚障害者に対する情報保障としてポピュラーなのは、手話・筆談・要約筆記などです。
けれど、軽度・中等度難聴者にとっては必ずしもその方法が合うわけではありません。
- 普段、耳できいて声で喋るコミュニケーションをしている
- 手話は堪能ではない
- 障害者手帳の対象外であるため、福祉制度を利用して要約筆記者や手話通訳者を派遣してもらうことができない
※自治体による
そんな私にとって最もわかりやすい情報保障は、
①音声をきき取りやすい環境であること
・話し手の声質
・音響が良い
・話し手やスピーカーとの距離
・話し手の口形が見える
など
②文字情報があること
・字幕
・自動文字起こし
・資料
など
だと思っています。
「きき取りやすい」という感覚は簡単に共有できるものではないので、当事者ではない人がその環境を準備するのは難しいですが……
「文字情報」ならば共通認識を持ちやすいので、イベントを企画・運営する方にとっても何を準備すればいいかがわかりやすいのではないでしょうか。
それに、何も字幕や文字起こしは、きこえない・きこえにくい人のためだけのものではありません。
目で見る情報の方がわかりやすい人もいれば
音声を出せない環境で視聴している人もいるかもしれません。
この読書会に参加してみて改めて、現地であってもアーカイブであっても字幕や文字起こしのつくイベントが増えると嬉しいと思いました。
(それが難しくとも、イベントを企画・運営する方の頭の中に「難聴の人が参加している」と留めておいていただくだけでもありがたいのです)
聴覚障害のある私たちが、何かわくわくすることを見つけたとき、
「でも私、難聴だからな……」とためらうことなく踏み出せるといいなと思っています。
本屋B&Bで開催されているイベントの予約ページに、こんな文面がありました。
知らなかった……! 参加してみたい!

この記事に出てくるお店
白と青と
https://www.instagram.com/sirotoaoto
本屋B&B
https://bookandbeer.com

